2024年4月16日(火)

Wedge REPORT

2015年12月4日


Q 海外企業の買収マネジメントはどうしているのか

A ロンドンのDANが、世界を3つの地域に分けて海外事業を統括している。3つとはEMEA(ヨーロッパ・中東およびアフリカ)、APAC(アジア大洋州、除く日本)、Americas(南北アメリカ)のことであり、それぞれの地域に収益の責任者を置いている。その下にカントリーマネージャーが国ごとの管理をする体制にしており、これが縦軸の管理。また、実際にサービスを提供するブランドごとのネットワークで管理する横軸を組み合わせて、全体を縦横のマトリックスで管理している。

 伊藤 誠司氏(いとう・せいじ)1980年に電通入社、2002年財務局長、06年経営企画局長、08年グループ経営管理局長、09年グローバル事業統括局長、13年4月に執行役員、現在に至る。59歳。札幌市出身

 今年の4月までは本社の取締役がロンドンに常駐して、イージス買収後の統合作業における経営管理にあたっていたが、統合が順調に進んだこともあり、いまは常駐していない。DANにとってM&Aは優れた人材、タレントの確保という面からも重要な戦略だと考えている。優れた人材を獲得し、相応しいポジションに就けて、良ければ引き上げる。人材の流動性が高い海外ではこうした人材の確保と維持は重要なポイントであり、DANではこの人材のマネジメントがうまくいっている。 

Q 売上総利益に占める海外事業構成比が50%を超えた中で、電通本社の外国人取締役が1人なのはバランスを欠くのではないか

A 海外事業構成比がいずれ70、80%になっていくと、外国人取締役が1人ではバランスが悪い。今後は国籍も含めた取締役の多様性を重視する必要が高まるだろう。

Q グローバル展開する電通の将来的な経営課題は

A 電通は日本の広告ビジネスについては誰よりも詳しいし、一番良いメディアの使い方を知っているという自負がある。日本では良い経営ができても、同時にグローバル市場を見据え、かつデジタルワールドはどこに向かっていくのか、といったことも考えながら経営していなかければならなくなった。海外事業構成比が50%を超え、今後、重要なグローバルの意思決定を日本人中心ですべきかどうか、といったことが経営課題になってくるだろう。単体としての電通ではなくグローバルな電通グループの経営をどうするのが一番良いのか、若手の人材を育てながら海外の人材をどのように取り入れていくのか、その仕組みを早期に構築していく必要がある。

本来、クライアントの黒子役に徹して目立たない存在だった電通が海外のデジタル関連企業を矢継ぎ早に買収、ドメスティック・イメージの強かった広告会社がグローバル&デジタルに大きく方向転換している。あとは本社の経営陣がこの流れを受けて、いかにして電通グループを世界で通用する広告会社、いや、ソリューションカンパニーへと進化させていくかに注目したい。

  
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