2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年12月11日

 米アトランティック・カウンシル上席研究員で元米国務次官補のロバート・マニングが、11月11日付National Interest誌ウェブサイト掲載の論説で、習近平が馬英九に会うことにした主要な理由は両岸関係の緊張と対立への逆戻りを避けることだった、と述べています。

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台湾の独自路線恐れる中国

 すなわち、中台首脳会談を72年のニクソン訪中に匹敵するとする者もいる。しかし会談にどれ程の意義があったのかは来年1月の総統選挙後を待たねばならない。今回の会談は、中国が単なる一つの省とみなす台湾を対等の存在として扱う異例の先例を作った。

 中国軍の近代化は台湾を念頭に始まった。馬英九が対岸に展開するミサイルの削減を求めたのに対し、習近平は台湾を目標としたものではないと空々しい主張をした。

 習近平は総統選挙での民進党の優勢を念頭に、両岸関係の現状を強化し、国民党を支援しようとした。台湾が独自路線を歩むことへの恐怖は明らかだ。

 馬英九政権下での関係発展により、台湾にとって中国は貿易の25%を占める最大の貿易相手国となった。対中投資は公的統計では600億ドルとなっているが実際は2~3000億ドルになるのではないかとする推算もある。

 民進党綱領は台湾の独立を標榜しているが、蔡英文候補は総統になっても現状を変えることはしないと述べている。「92年コンセンサス(一つの中国・それぞれの解釈)」について民進党は立場を明確にしていない。蔡主席は今年の訪米の際、両岸の現状は受け入れるとして、オバマ政権を安心させた。

 中国経済圏に組み込むことによって政治関係と統一を加速化しようという中国の目論見は未だ結果が出ていない。却って台湾では中国との経済統合への反感が強まっている(14年のひまわり運動)。

 首脳会談で習近平は一国二制度が中台統一のモデルだということは述べなかった。台湾の大多数の人は「一国1.5制度」になることを恐れている。

 台湾は、中国が台湾の国際機関加盟(WHOなど)を強圧的に阻止していることを懸念している。台湾にとり国際空間の拡大は重要課題であり民進党政権はこれを一層重視するだろう。習近平はAIIBへの台湾加盟を認める旨を述べたがそれは先例になりうる。台湾はTPP参加に強い関心を有している。台湾のTPP等への参加を中国が許すかどうかは、両岸安定が今後も続くかどうかのひとつの指標になる。

 習近平が馬英九に会うことにした主要な理由は両岸関係の緊張と対立への逆戻りを避けることだったようだ。他方、共産党がコントロールできない程に台湾統一圧力を求めるポピュリスト・ナショナリズムが高まる可能性もある。今回の会談が新しいダイナミズムをもたらすのかどうか、それは民進党総統との次期首脳会談があるかどうかで分かるだろう、と述べています。

 出典:Robert A. Manning,‘Deciphering the Big China-Taiwan Meeting’(National Interest, November 11, 2015)

 http://nationalinterest.org/feature/deciphering-the-big-china-taiwan-meeting-14311

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