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2015年12月28日

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澤 昭裕 (さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1957年、大阪府生まれ。1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)入省。東京大学先端科学技術研究センター教授等を経て現職。21世紀政策研究所研究主幹も務める。

 実際、15年6月に閣議決定された「原子力災害からの福島復興に向けて(改訂)」を踏まえた国からの指導により、東電は避難継続の期間にかかわらず、帰還困難区域以外の避難指示解除準備区域や居住制限区域にも一律事故後6年後の解除と同等の精神的損害賠償を支払うこととしている。

 今後の支援のあり方を考える場合、従来の区域設定や避難継続の期間と賠償条件がリンクしている構造を、いったん断ち切ることが重要である。つまり、政府(原子力損害賠償紛争審査会)による損害賠償指針に基づいた損害賠償は全ての区域について、現在決まっているものを除き16年度で終了し、17年3月が期限とされている避難指示解除期限を境に、政府は損害賠償問題から地域コミュニティの再構築や個々人の生業・生活再建に向けての施策に努力を集中させるべきなのだ。

 もちろん、その期限までには現状問題として残っている損害問題についての一定の解決策を政府が提示する必要はある。ただし、その際にも福島県以外の県での災害支援との落差や、一般の損害賠償事案の判例とのバランスを十分とった解決策とすべきである。政治的には楽だという理由だけで、最終的には電気料金という国民負担の増額につながる決定を安易に行うことは、法の下の平等という観点に反する。

 損害賠償に一定の区切りをつけたあと、何も支援は要らないのかといえばそうではない。政府は、大規模な原発事故がもたらす地域コミュニティの崩壊への対応を想定外としていたことに対する反省に立ち、コミュニティ再生支援を強化すべきだ。そのためには、コミュニティの構成員一人ひとりに対する支援と地域全体を視野に入れた地域振興策の両方が必要となる。

 その際、福島の未来は現世代に引き続いて次世代が担うのであり、長期的視点に立つことが必要だ。若者、そして子育て世代が家族で生きがいを持てる地域にしていくという基本方針を諸施策の中心に据え、以下の支援の重点化を行うとともに、日本で最も進んだ子育て環境を構築するために必要な規制緩和などを実現するための特区制度の活用も検討すべきである。

 現在の支援の体系は、帰還を目指す者に対する支援を中心としている。これは、原発事故で崩壊した地域再建を優先課題とするという観点からは合理的だったが、避難指示解除後は、支援は損害賠償の枠組みでは歪みが生じる。支援策に必要な資金は、コミュニティにおいて生業を持ち、日常生活を営む個々人の人生設計に有効に使われなくてはならず、何らかの精神的損害への賠償に消えていってはならない。

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