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2015年12月28日

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澤 昭裕 (さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1957年、大阪府生まれ。1981年一橋大学経済学部卒業後、通商産業省(現在の経済産業省)入省。東京大学先端科学技術研究センター教授等を経て現職。21世紀政策研究所研究主幹も務める。

 政府は多くの復興施策を進めているが、現実を踏まえない理想論に近いものが含まれ、総花的であるとの批判があるのも実情だ。当時の意思決定の背景、過程を関係者の証言も検証しつつ、改めて、現在の状況や住民の選択に即した実効的な目標を再構築すべきだろう。その方が結果的には、復興を早めることになる。

 町の大半を帰還困難区域が占める大熊町、双葉町における将来像については、国により「大熊・双葉ふるさと復興構想」が策定され、また、地元の意向を踏まえた「福島12市町村の将来像」でも議論が行われているが、あくまで現状の市町村を単位に、将来の帰還を目指すという姿勢自体を見直すものではない。

福島第一原発の立地町、大熊町にも線量の高くないエリアがある(大川原地区にある、第一原発向けの食事をつくる福島給食センター) Wedge

 現実的な選択肢は、帰還困難区域であっても地域によって線量の高低がある中、比較的線量が低い場所に町の機能を移して復興拠点化するとともに、ライフライン・インフラ整備や宅地開発、教育・生活関連施設の設置などを集中的に進め、復興が進んだ地域を中心としてその周辺域に住民の帰還や新規流入を促していくということではないだろうか。もともと暮らしていた場所は高線量が続くと判断されるような場合には、その場所への帰還を諦め、新しく形成される町の計画の中で、こうした状況に直面する住民に対する配慮を優先的に行った居住地区を位置づけていく必要がある。つまり、これまでの線量による区分から、復興に重点を置いた区域設定に切り替えるということである。

 例えば、国道6号線以東は福島第一原発周辺地区及び中間貯蔵施設を含めて公的な管理区域とし、一方復興の拠点とされる地区については復興重点区域として除染作業を重点化して復興関連施設の建設を可能とする、さらに個人線量をベースとして依然として放射線リスクが高いと考えられる地域は「放射線影響遮断区域」として立ち入りを制限しつつ、効果的な除染対象場所を特定し、除染作業を着実に行っていくことにするといった具合である。

 こうした現実的な選択肢を実現していくためには、現状の市町村の境を越えた広域的な地域復興・開発ビジョンが必要となってくる。原子力発電所が稼働していた時には、地元自治体は財政的にも豊かだったこともあり、市町村合併については消極的であったとしても、ある意味合理的な選択だったわけだが、いったん事故が生じてしまえば、そうした構造は根底から覆っているのが現実だ。

 確かに、どこの市町村においても歴史がある。しかし、限られた資源を広域的な地域復興に投ずる場合には、大同団結的な発想や割り切りが必要となる場合がある。また、行政区画は経済活動や人々の生活実態と軌を一にしているわけでもない。帰還困難区域を含む広域的な地域復興計画を考えていく場合には、周辺の中規模都市(例えばいわき市)などとの有機的な連携も視野に入れていく必要がある。復興に必要な規制緩和などを広範囲に取り込んだ特区指定を広域的に行うことで、他地域にはないインフラ整備や種々のサービス・生産活動を生み出す「新しい地域」を創造していくことが重要だ。

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