2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2009年10月31日

 営業面では少子化が進む日本だけでなく、アジア、特に中国の市場も視野に入れており、富裕層向けの健康関連サービスなどを提供するSBIウェルネスバンク(東京都港区)と業務提携を交わしている。同社は既に中国の富裕層を対象にした、日本での人間ドッグツアーなどメディカルツーリズムの先駆けとなるサービスを手掛けており、歯髄の細胞バンキングもメニューに追加した。福澤雅彦COOは「1人っ子政策の続く中国では、子供や孫への投資がもの凄い。日本の医療技術の高さも信頼してもらえるはず」と中国の市場性と日本ならではの商品性の高さに自信を見せる。

 また、歯髄の幹細胞から作ったiPS細胞による再生医療の研究も行われており、この分野で先頭を走る岐阜大学との連携で鶴見大学と再生医療推進機構(東京都中央区)とが共同で、歯髄のバンキング事業を立ち上げた。歯髄由来のiPS細胞による再生医療も視野に入れ、同社は国内の歯科で1年間に抜歯され、医療廃棄物として処理される約1000万本もの乳歯や親知らずなどに含まれる歯髄細胞の保管に乗り出した。HLA(ヒト組織適合抗原)という幹細胞の型が合致すれば、理論上、第三者への治療用細胞の提供が可能という。「9割以上の国民に細胞が提供できるような事業に育てたい。全国に7万件ある歯科クリニックに提携を呼びかけ、10年間で保管数30万件を超える細胞バンクを実現する」(大友宏一社長)と目標を掲げる。

170万人が待ち望む実用化

 体性幹細胞にしろiPS細胞にしろ、再生医療の現場で安全かつ安定的に活用されるまでには、まだ時間がかかるとされる。それでも、再生医療の実現に向けた研究は、急速かつ着実に進展しており、逆に医療法や薬事法、ガイドラインなどの法整備が追いついていないのが状況だ。前述の八重垣教授は最先端医療の研究に取り組む一方、「国民的なコンセンサスができれば、法的バリアは自ずと消えていく」との考えから、健康教育を社会に根付かせる研究に注力し、全国の小学校や老人ホームに自らも足を運び「自分の健康を自分で守る重要さ」を説いて回る。

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の調査によると、再生医療対象の患者は国内だけでも約170万人存在しているとされる。こうした現状に、再生医療に携わる者からは、過度の期待を持たせてはいけないと釘を刺しつつも、「1日でも早く患者を救いたい」という熱意がひしひしと伝わってくる。

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