田部康喜のTV読本

2016年1月30日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

定められた短い人生を燃やす愛

 学苑の体育教師として赴任してきた、堀江龍子(伊藤歩)は校長の神川の教育方針に抵抗する。そして、友彦らに「君たちは本当のことを教えられていない」と告げる。サッカー選手を夢見る友彦に、そうした人生もありうるというのである。

 しかし、それはかなわぬ夢である。臓器提供者としての運命が決まっているからである。

 iPS細胞によって、人間の耳の形の軟骨を背中に生じたマウスの映像が発表されたのは、つい最近のことである。同じ遺伝子を持つ「クローン」は、羊ではすでに作られている。遺伝子工学の先には、さまざまな可能性が唱えられている。

 「わたしを離さないで」は、臓器の提供を前提として作られた子どもたちの物語である。その使命故に彼らは天寿をまっとうできない。

 カズオ・イシグロは語る。

 臓器提供のために作られた美しく若いクローンが、普通の人なら70~80年かけて経験する人生を、わずか30年という短さで経験するお話にしようと決めたんです。

 ドラマのカメラワークは、女優たちのアップを美しく描き出し、バックの風景もまた美しい。

 第3回(1月29日)以降では、恭子と友彦、美和が思春期を迎えて、ドラマの結末まで続く3人の交錯する恋愛模様が描かれていく。それは短い人生を燃やす愛となる。

 学園の校長の神川と、学園を訪れては子どもたちの絵や彫刻などの作品を買い上げていく、マダムと呼ばれる女性(真飛聖)が秘めている謎とはなんなのか。3人の若者たちの物語に絡み合うようにして、ふたりの女性の正体も明らかになっていくのだろう。

 ドラマの視聴率は、第1回が一ケタである。最近、視聴率とは別に、視聴者の満足度でドラマの優劣を競うアンケートが重要視されてきた。秋のドラマでは菜々緒主演の「サイレーン」などが注目された。「わたしを離さないで」の私の満足度は高い。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る