2024年12月7日(土)

イノベーションの風を読む

2016年2月5日

 デジタルカメラの販売台数の急激な落ち込みが続くなか、カメラメーカの生き残り戦略として興味深い2つのデジタルカメラが発表された。その一つ、ニコンのアクションカメラ「KeyMission 360」については前回の記事(「GoProイーターとなるか? ニコン全天球撮影アクションカメラ」)で紹介した。もう一つは、パナソニックが1月19日に発表した「DMC-CM10」というモバイル通信機能を持ったデジタルカメラだ。

 しかし残念なことに、それはちょうど1年前に発表(発売は2015年3月)された「DMC-CM1」と同じものだった。ハードウェアもソフトウェアもまったく変わっていない。日本で2000台限定販売だった「DMC-CM1」の色と名称だけを変えて(ストラップを取り付けることができるようになったが)、限定でない商品として発売するという。しかし、1年前の古いスペックの製品だから残念だというのではない。

パナソニックの通信サービス事業

 パナソニックは2007年にhi-hoという通信プロバイダ事業から撤退したが、2013年にスマートフォン向けのWonderlinkというブランドの格安SIMで通信ビジネスに再参入した。NTTドコモなどのモバイル通信事業者(MNO)のネットワークを借りて、独自の通信サービスを提供する事業者はMVNOと呼ばれるが、パナソニックは当初、パケット通信交換機や課金・認証などの設備を保有するMVNE(富士通とIIJ)のソリューションを利用したCのパターン(下図参照)で格安SIM事業を行っていた。

MVNOのパターン(筆者作成)
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 そして2014年にIIJの支援を受けて課金・認証と帯域制御のシステムを自社に導入し、BとCの中間のパターンで法人向けのモバイル通信サービスを開始 した。こちらは「Wonderlink LTE A」という名称で、通信対応の「レッツノート」専用のSIMを個人向けにも提供している。

 パナソニックはこのシステムを使って、「DMC-CM10」用に「Wonderlink LTE L」というモバイル通信サービス(SIM)を提供するようだ。「DMC-CM10」はSIMフリーなので他社のSIMを利用することもできるが、「Wonderlink LTE L」はデジタルカメラでの使用を前提としたプランになっている。月額1480円の定額で、その月の通信料が一定量を超えると下り回線のスピードが制限されるという設定は他の格安SIMと同様だが、上り回線はその制約を受けない。撮影した写真は無制限にインターネット上のサービスに送ることができる。


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