デジタルカメラのユーザが抱える問題
パナソニックが訴求している「CM-1/CM-10」のコミュニケーションの機能は、撮影した写真をカメラで編集して、クラウドへ保存したりSNSにアップロードすることができるというものだ。これではスマートフォンの後追いでしかない。「CM-1」は高性能カメラの付いたAndroidのスマートフォンだったが、「CM-10」からは通話機能が削除された。
それによって、「CM-10」はスマートフォンとの2台持ちになることが多くなるだろう。高性能になってしまったスマートフォンと「CM-10」とのカメラ性能の差が、月額1480円の追加支出に見合う価値になるとは思えない。せっかく自社のモバイル通信サービスをバンドルできるのに、デジタルカメラの通信機能を顧客価値に転化できていないのは残念だ。
デジタルカメラのイノベーションとは、スマートフォンのカメラとの機能的なギャップを埋めようとするのではなく、その基本的な優位点を理解しそれを活かすものであるべきだ。依然として旅行や子供の入学式などの大切なイベントで、たくさんの写真を撮るためにデジタルカメラを持っていく人は多い。その理由として、専用機への信頼感や光学ズームが備わっていることなどが考えられる。
しかし、そのような時に撮影した莫大な数の写真が新しい問題を生んでしまっている。写真は管理しなければならない単なるファイルになってしまい、それをカメラからパソコンにダウンロードしたり、それほど素晴らしくもないものも含まれる数ギガバイトの写真を整理したりという、気乗りのしない面倒な作業をしなければならない。ほとんどの人にとって、これはじれったくてストレスが溜まるもので、なによりも退屈で時間を浪費するものだ。
パナソニックは対象となるデジタルカメラを購入したユーザに、2年間無料で使えるクラウドストレージ(Google Drive)100Gバイトを提供している。2Mバイトの写真であれば、5万枚を保管できる計算になる。撮影したすべての写真が自動的にカメラからクラウドストレージに送られれば、ユーザは面倒な作業をすることなく、いつでもどこでもスマートフォンで自分のすべての写真にアクセスすることができるようになる。
グーグルはGoogle DriveのAPIを公開しているので、パナソニックは「デジタルカメラのユーザが抱える問題」を解決し、Google Drive上の莫大な数の写真に価値を与える独自のWebサービスやスマートフォンのアプリをユーザに提供することが可能だ。デジタルカメラというハードウェアだけではなく、撮影から保管、そして写真の活用までのエンドツーエンドの新しい体験を商品にすることができるはずだ。