2022年11月27日(日)

家電口論

2016年2月6日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

1961年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒、同理工学研究科修了。大手メーカーにて商品開発・企画を担当後、独立。現在、商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。

 話を元に戻します。

 以上のような意味で、株式会社の場合、経営者は基本、右上がりの部分を会社に持ち続ける必要があります。そうでないと投資してもらえない。これが株式会社というものです。

ミーレがファミリー会社であり続ける理由

ドイツのアウトバーン(iStock)

 ミーレはファミリー会社であるのは、投資家に口を挟まれるのがいやだそうだからです。それを象徴するような話がミーレには残っています。

 時は、第二次世界大戦前。

 この時、ミーレはクルマも作っていたそうです。家電屋がクルマというと可笑しな感じがするかも知れませんが、昔の技術者は何ができて、何ができないということはないですからね。発明王エジソンなどは好例ですね。何でも作ってしまう。電気自動車に家電メーカーが乗り出しても可笑しいことではありません。

 で、このミーレカー、家電の様に素材にこだわった作りで、よく売れて非常に評判が良かったそうです。が、このクルマ事業をミーレは止めるのです。

 理由は、クルマは巨大産業なため、大幅な投資が必要。そうなると自分の意に反する仕事をしなければならないかも知れない。そのリスクがあるなら、クルマビジネスは止めよう。ということだそうです。

 さすがにこの話を聞いたとき唖然としました。また慄然ともしました。クルマビジネスの黎明期とはいえ、大戦時にはアウトバーンまで持っていたドイツですからね。伸びるビジネスであることは明白です。普通は、借金しても勝負ですよね。

 しかしミーレはそうしなかった。つまり自分でできる範囲を仕事としたわけです。極端な言い方が許されるなら、自分の眼が行き届かない製品、もしくは投資家の言いなりで作らなければならない製品を排除したとも言えます。

 それが正しい判断だったのかは、分かりません。しかし、業績は伸びた方がいいとする通常の考え方から離れていることは事実です。

 身の丈に合った確実な無借金経営は、一つの道としてありますが、逆に言うと伸びの否定にも繋がります。しかし、安心して自分がしたい仕事に集中できる環境を確保したと言えます。周囲と異質な程の高品質も、あの高価格も文句を言われずに出せるわけです。

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