──なぜコンプガチャ問題が発生したあとに、ギャンブルに関連する風営法や刑法改正などの「根治治療」を施さなかったのでしょうか。
山本 コンプガチャ問題が発生した12年は民主党政権の末期で、軽量級の政権というか、ソーシャルゲームなど向けに新法をつくるほど政権が安定していないとみられていました。当時、警察庁としては風営法改正で対処したいと考えていたようですが、根治治療を施すには、ガイドラインの変更ではもたず、大掛かりな改正が必要となります。そうすると1~2年後にしか実効性をもたない。いつまで続くかわからない政権だったので、当時の消費者庁の判断として、実効性より即効性を求めたといわれています。知恵を絞った結果、さきほども話題にのぼった景品表示法の「優良誤認」と「カード合わせ」を適用することになりました。
──今の自民党政権は政権基盤が安定しているので、法改正しやすいのではないでしょうか?
山本 その通りです。16年型のソーシャルゲーム規制議論は、12年のコンプガチャ規制よりは踏み込むことになると思います。パチンコやパチスロを含めた風俗営業全体の見直しの中にソーシャルゲームも入っており、法改正を含めた議論もされると見られます。
木曽 難しい問題もあります。日本でサービスを提供しているものの、海外に事業主体もサーバもあるという企業は多数あります。こういった企業に対しても実効性をもった制度を整備していかなければ、日本企業が損をします。海外へ逃げる企業も出てきます。
コンプガチャ問題のときのプラットフォーマーはGREEやDeNAといった日本の企業でしたが、スマホ時代の現在、プラットフォーマーはアップル、グーグルであり、これもまた問題の解決を容易ならざるものにしています。
──実効性のある解決策はあるのでしょうか?
山本 例えば、日本がEUやアメリカ、OECD各国などとソフトウェアの流通規制をつくるという方法です。ただ、その枠組みに入らない国の企業には適用できません。
木曽 アメリカには、違法インターネット賭博規制法という法律があります。これはアメリカのルール内で違法だと位置づけられる賭博サービスに対して、金融決済を禁ずる法です。事業者は決済手段がなければ商売が成立しません。ただし、日本だとその様な制度の成立に対して積極的に協力する金融機関が少ないのと、仮想通貨なども含めて金融庁が所管しない決済手法がたくさん出てきているので、実効性は薄れます。
山本 ある程度大きくなった企業に対して「そういえばおたくの企業こんなことをしていたよね」と後付けでひっかけることはできます。DeNAもGREEも以前はややこしい企業でした。それが、「あなた方は上場して社会的立場がありますよね。青少年の健全育成に資する活動をしていますか? していないですね。じゃあ自分たちで仕組みを考えて報告してくださいね。しない場合はわかっていますね」とやるわけです。経営者の地方でのイベント登壇日に合わせて公正取引委員会が立ち入りしたこともありました。