2024年4月20日(土)

ASEANスタートアップ最前線

2016年3月7日

 転機はインターンシップだった。ゴールドマン・サックスのロンドン支店で、フルタイムのインターンシップを経験する。朝9時から夜中2時まで――そんなことが当たり前の環境で働いていたが、なんだかエキサイティングではない。彼はその時自分の気持ちに原点回帰する。「新しい物を創る」ということだ。さらに、卒業前にシリコンバレーを視察したことも影響し、彼は卒業後、一流企業に勤めることを止め、起業することを決意する。

立ち上げた企業をたった2年で売却

 Timは大学を卒業後、kaufDAを創業する。コンセプトは「デジタルチラシ」だ。オフラインのチラシの情報をMAP上に載せる、しかもGPS上で近くにあるお店のクーポン情報が見える、という極めてシンプルなビジネスモデルだ。

 何もないところから、アイディア一つで立ち上げた。最初は馬鹿にされた。お金もつかなかった。やっと投資してもらったお金で事業を成長させた。最初の一年は、自分の給料はほとんどなく、貧しい暮らしを強いられ、なんでもした。自分たちのサービスが知られるために、色々工夫をした。ステッカーをポストにいれたけど全く反応がなかった。そこで、ステッカーをポストに貼りつけたら、100件のリアクションと内50件のクレームがあった――。 そんなこんな、泥臭い努力を続けるうちに、ユーザーがついてきた。ビジネスはどんどん成長し、今では、月間3000万人が利用する一大アプリだ。そして彼は、創業からたった2年で企業を売却し、ドイツでは一躍時のヒトとなった。

 世間からは成功された若手経営者としてもてはやされた。名誉も富もある。しかし彼には一つの思いがあった。「世界を見たい――」これまでドイツ中心にしか生活してこなかった彼は、世界を見る旅に出た。彼は南米、アフリカ、そしてアジアに来た。そこで彼が目にしたものは、母国ドイツとのギャップだった。「ドイツには当然あるものが、途上国には無い」。とりわけ、アジアの成長の可能性に胸を躍らせ、彼は一大決心をする。マレーシアに移住し、起業家として第二のキャリアを始めるのだ。Asia Venture Groupの誕生だ。


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