2024年12月22日(日)

ASEANスタートアップ最前線

2016年2月17日

スタートアップ週間の香港の街並み(筆者撮影)

 香港と言えば、読者の皆さんはどういうイメージを持たれるであろうか。2014年に発生した雨傘革命による本反政府デモ、最近では書店関係者の連行事件など、中国政府との対立ニュースが世間を賑わせている。一国二制度という下、中国における資本主義の中心地として栄えてきた香港。その香港に、1月下旬、私は人生で初めて訪れた。 

 香港政府が主催したスタートアップウィーク「StartmeupHK」に参加するためだ。スタートアップの認知を盛り上げるべく、街は、写真のように、至るところにスタートアップウィークを啓蒙する看板にあふれ、あちらこちらでスタートアップ関連のイベントが開催されていた。

 香港では、金融の中心地であることからまずはフィンテック、そしてヘルスケア、ビッグデータ、そしてIoTへの産業育成に注力していくという。果たして、実態はいかに。今回の記事では、香港の現場の雰囲気と共に、香港のエコシステムの発達状況、並びに香港発のスタートアップのトレンドをお伝えし、東南アジアや日本市場に食い込む可能性を考えたい。

香港はアジアの「ニューヨーク」

 シンガポールのトロピカルな陽気は人を穏やかにさせるが、平坦な土地で山が無く、代わり映えのない季節は、時折人を退屈にさせる。一方で、香港は、複数の島から成り立ち、山があり、四季もある。シンガポール以上に人口密度が高いため、高層マンションがあちらこちらにそびえ立っている。シンガポールよりも狭く、家賃の相場感は日本の2倍以上するという。現地で会った友人夫婦は、わざわざ広い家に住むため、香港の中心地とは離れた島に家を借り、毎日フェリーで通勤しているという。

 交通の便はかなり良い。複数の島々は地下鉄でつながっている。バスもフェリーもたくさん出ており、隣国のマカオには24時間で船が往来しているし、中国の深圳にもバスで数時間で行くことができる。セントラル(中環)と呼ばれる香港島の中心地は、世界有数のビジネスセンターだ。スーツ姿でさっそうと歩く金融マンで溢れている。中国特有の雑多な雰囲気の中で、西洋・東洋問わず様々な国籍の人が道を闊歩しており、まさに「人種のるつぼ」を感じさせた。

 エンターテイメントも多いのが特徴だ。LKF(Lan Kwai Fong)という繁華街では毎晩のように若者がパーティをしている。ちなみに、シードアクセラレーターのnestは、著名クラブが入るカリフォルニアタワーの1フロアを借り、イベント会場として毎晩のようにスタートアップ関連のイベントをしている。山の斜面沿いにはこじゃれた感じのレストランやバーがたくさんあり、郊外には(評判があまり良く無いが)ディズニーランドもある。

 香港人はどんな人々だろうか? 現地の人と触れ合って確信したことは、とにかく香港の人は最先端の物が好き、ということだ。アーリーアダプター層が多い。現地の投資家の知人の情報によると、世界で最も高い売上高を誇るアップルは香港にあるそうだ。確かに、ローカルの友人の携帯は、iPhone、iPhone、ひたすら iPhoneだ。私はHuaweiの格安携帯を使っているのでローカルの友人に見せたところ、笑われてしまった。

 狭い土地に様々な人種の人が密集し、ビジネスの舵をとっている。流行りものが好きで、皆が皆どことなく洒落て見える香港は、正に「アジアのニューヨーク」である。


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