2024年11月22日(金)

ASEANスタートアップ最前線

2016年3月7日

ベンチャービルダーAsia Venture Groupとは?

 Asia Venture Groupは、一般的なVenture Capitalと異なる。まず、一般的なVCは起業や個人投資家の資産を運用する形で投資を行うが、彼らは自身の資産で投資(自己資本投資)をする。次に、VCはハンズオンとはいうものの、一般的には起業家を資金面でサポートするにとどまる一方、Asia Venture Groupは、起業時のコンセプトから入り、立ち上げるスコープが決まったら優秀な起業家を招いて創業、一緒にアントレプレナーとしてゼロから企業の創業を手伝っている。

 なぜマレーシアを拠点に選んだのか? という点では、同じくマレーシアに拠点を置くインキュベーターCATCHAグループと同様の理由だ。税制面ではほぼシンガポールと同じ恩恵を受けることができるのに加え、生活費や人件費がシンガポールよりも安い。マレーシア人は中国語・英語・マレー語(≒インドネシア語)を操るため、東南アジア各国に進出しやすい。投資だけならシンガポールかもしれないが、ビジネスのオペレーションまで踏み込むなら確かにマレーシアが良いのかもしれない。

 Asia Venture Groupが初めに手掛けたのは金融商品の比較サイトのiMoneyだ。クレジットカードや保険商品の比較をサイト上で行うことができる。現在、東南アジアでは最大手のプラットフォームの一つに成長している。続いて、2014年末にビッグラウンドを終えたのがオンデマンドで生鮮食品を配達するデリバリーサービスのHappy Freshだ。交通状況が悪く、日本のように徒歩で気軽に買い物に行くことがしにくい東南アジアでは、強いニーズがあり、そこにアメリカのInstamartのモデルを導入したのがこのサービスだ。東南アジアでは海外からの駐在者や一部の富裕層で人気が出ている。

膨大なチャンスが眠る東南アジア

 そして本年、力を入れているのがiPriceだ。マーケットプレイスのアグリゲーターだ。価格コムにも近いといえる。日本ではマーケットプレイスと言えばAmazon、楽天、ヤフーの3強だが、東南アジアでは国によってバラバラで、統一されていない。また、カテゴリの精度も日本のようにきめ細かに整っていない。そこで、アグリゲーターとしてのiPriceのニーズが存在する。データフィードを繋いで、解析し、独自のアルゴリズムでユーザーが買い物しやすい情報をユーザーに提供する。

 3社に共通している点は、3社ともしっかりとリードをとって投資をし、ゼロイチの事業創造を手掛けている点だ。次に、3社ともリージョン展開をしている点だ。東南アジアの1カ国だけに目を向けると市場の大きさは決して魅力的ではない。でも、東南アジア全体に目を向ければ、そこには膨大なチャンスが眠っている。最後に、彼は、優秀な人材を彼自身のネットワークからスカウトし、世界中から呼び寄せている。先進国にいる人材が、途上国で働く機会を創りだしているのだ。


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