我々が多大の努力を払ってシリアの防空ポテンシャルをも回復させたことも指摘しておきたい。全ての関係国には、このことを承知しておいてもらいたい。我々は国際規範の根本原則から出発している。つまり、いかなる国も主権国家の、この場合はシリアの領空を犯すことはできないということだ。
我が国は米国とともに空中における事態を監視するメカニズムを設置し、これは実際に機能しているが、全てのパートナーが以下のことを知るべきである。すなわち、我が防空システムは、ロシアの軍人に対して脅威となるとみなしたあらゆる目標に対して使用されるということだ。強調しておくが、あらゆる目標に、である。
もちろん、シリアの正統な政府はまずもって支援する。これは複合的な性格を持つものだ。そこには財政支援、装備及び武器の提供、訓練協力、シリア軍の組織及び編成、偵察支援、作戦計画に対する参謀支援が含まれる。そして、これは一過性に終わらない直接的な援助である。宇宙グループ、攻撃航空部隊、戦闘機部隊も参加する。シリアに残留するロシア軍は、これらの任務を果たすに十分なものである。
いわゆる「イスラム国」、「ジャフバト・アル・ヌスラ」、その他すでに述べた国連安保理認定のテロ組織との戦いに関して、我々はシリア軍及び政府に対して支援を提供する。我々のテロリストに対する妥協のない態度には変化はない。
愛国的勢力は近いうちに勝利する
ロシア軍の削減によって軍事バランスにはいかなる変化があるだろうか? バランスは保たれるだろう。
我々の支援によってシリア軍が強化されることにより、我々は近いうちにテロリストとの戦いにおける愛国的勢力の多大な成功を目にすることになろう。
ご存知のとおり、現在、パルミラでは攻囲戦が行われている。この世界文明の真珠が無法者による占拠の後も残り、シリア人民と全世界の手に帰ることを望む。
そしてもちろん、必要とあればロシアは数時間で状況に応じた規模まで域内の部隊集団を増強し、可能な限りの全兵力を投入することができる。
このようなことはしたくない。軍事的エスカレーションは我々の望むところではない。それゆえに、我々は反体制派、シリア政府、和平プロセスへの反対勢力の全ての賢明な考えを望むのである。
これについて、バッシャール・アサド大統領の立場についても述べておきたい。我々は同氏の抑制、和平への真の意欲、対話に向けた妥協の準備があると見ている。シリア問題解決のためのジュネーブ対話の開始に際し、我が部隊集団のかなりの部分を撤退させたという事実自体が前向きの重要なシグナルであり、紛争の全当事者がこれを的確に評価してくれるよう期待している。
パートナーとの調整の下でシリアに平和をもたらすため、そして長きにわたって苦しんできたシリア国民をテロの脅威から解放してシリア人に自らの国家を取り戻させるために働き、必要な努力を行おうではないか。
(翻訳ここまで)
引用が少し長くなったが、このセクションには興味深い部分が多い。
第一に注目されるのが、この演説はシリアのアサド大統領に向けたメッセージでもある、という点だ。演説中ではアサド大統領に「抑制」を求めているが、これは戦況の逆転によってアサド政権が停戦に消極的になっているとされることに関係していると思われる。アサド政権の頼みの綱であるロシア軍の撤退は、停戦が破れればアサド政権が再び劣勢に陥りかねないということを意味する。演説中ではアサド大統領の支持を得て撤退を決定したとされているが、実際にアサド大統領が撤退を知らされたのは直前であったとも言われ、ロシアからアサド政権への一種の圧力であったとも読み取れる。