2024年12月26日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月13日

 3月14日、プーチン大統領がシリアからロシア軍の「主たる部分」を撤退させることを発表しました。それを受けて、3月15日付の米ワシントン・ポスト紙は、勝者はプーチンだという趣旨の社説を掲げています。要旨は以下の通りです。

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またも不意打ち食らったオバマ

 プーチン大統領は、オバマ政権を再び驚かせた。クリミアの占拠と東ウクライナへの侵攻の際と同様、プーチンの目標と成功のチャンスを見誤ったために不意を突かれた。昨年9月、オバマはロシアのシリア介入を「泥沼」への前奏曲だとあざけった。しかし、プーチンは多くを達成した。それは、米国の利益とこの地域での米国の目標を犠牲にして達成された。

 最も明らかなロシアの成果は、内戦の進路を逆転させたことである。アサド政権は昨年夏には悲鳴をあげていたが、今や米国が支持する反体制派に対して優位に立っている。ロシアの説明によれば、政権側は400の町と4000平方マイルの領土を取り返した。反体制派が支配するアレッポへの供給ルートを遮断した。米露間で交渉された停戦がこれらの成果を固定化した。

 より広い観点からは、プーチンはロシアを再び中東のパワーとすることに成功した。米国はロシアを停戦と和平交渉をとりもつパートナーとして認めざるを得ず、アサドは権力を近く放棄すべしとの要求を脇に置くことを含め、プーチンの条件を呑んだ。ウクライナ侵攻後の孤立を打破し、欧州へのシリア難民の流れを決する主要なプレーヤーとなることによって、プーチンはこの夏にはEUの制裁の解除を要求し得る立場になった。

 政府筋は、シリア停戦によって数百万のシリア人に支援物資を届けられるようになったと言うが、ロシアの介入による人道上のコストは多大である。ロシア軍は病院や食料品店を意図的に標的とし、クラスター爆弾で多数の市民を殺害したが、ロシアはこれらの犯罪を贖ってはいない。


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