「戦場中毒 撮りに行かずにいられない」
(横田 徹 文藝春秋)
(横田 徹 文藝春秋)
直近の戦場取材は昨年12月。クルド人勢力が制圧したイラク北部のIS(イスラム国)支配地域だった。撮影は無事終了したが帰路で対向車と正面衝突、相手の車は3人が即死し、横田さんも肋骨を3本折ったという。
「シートベルトがなかったんです。あっちでは人命が軽いというか、死がすごく身近で」
髭面の童顔を崩し、にこやかに話す。
1年前の湯川さん・後藤さん殺害事件の際、テレビ番組に連日ゲスト出演していた時もそう感じたが、あまりに温和な印象で、百戦錬磨の報道カメラマンとはとても思えない。
しかし本書を読むと、26歳で飛び込んだカンボジア内戦から、東ティモール、コソボと紛争地を巡り、アフガニスタンでは10年以上かけてタリバン側とアメリカ軍側の双方に従軍取材。緊迫のシリアにも2度潜入し、IS幹部のインタビューや「首都」ラッカの知られざる内情も報告している。
活動の軌跡を辿るだけで、押しも押されもせぬ第一級の戦場ジャーナリストとわかるのだ。
「戦場で一番気をつけているのは?」
「今なら誘拐されないことです」
「銃撃ではない?」
「弾に当たる当たらないは運。けれど、誘拐されるとそれでは済まず、家族、関係者、政府など多方面に迷惑をかけますからね」
横田さん自身、「身代金交渉はしないで」「(自分の)遺体は現地で処分して」とすでに関係省庁の知人に依頼してある旨、本書中に記しているが、「事態は執筆当時より悪く、外国人は常時狙われる現状」らしい。しかし、そんな危険を冒してまでなぜ「撮りに行かずにはいられない」のか?