2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月20日

 こういう主張に対しては、断固対決していく以外に道はありません。紛争になることを恐れて躊躇していると、航行の自由や飛行の自由が既成事実として侵食されることになります。対決を恐れない姿勢を示し、中国に厳しく警告し、またしっかりと権利を行使していくべきでしょう。

軍事的対立忌避する弱腰オバマ

 国防省は中国が南シナ海でADIZを設定した場合、それを否認する飛行を行うことを考えているが、ホワイトハウスの了承を得られるか否かを懸念しているとこの記事は述べています。イグネイシャスはワシントンでの事情によく通じた人であり、この記事の描写は真実に近いと思われます。オバマ・ホワイトハウスは軍事的対決を回避することに傾きがちであり、南シナ海でもそうする可能性があり、中国にレッドラインを越えさせる恐れがあります。これは大きな懸念を呼び起こします。

 中国も、この記事を、関心を持って読んでいると思われます。

 キャンベルは、米国は東南アジア諸国と協力して行動するのが望ましいと言っていますが、米国は自らの利益のために航行の自由や飛行の自由を確保すべきであって、東南アジア諸国との協力を条件にすることはありません。ベストを望んで、ベターを排する結果になりかねません。

 フィリピンやベトナムにも埋め立てや人工島建設を慫慂することは論外です。中国がしていることを非難しておきながら、近隣諸国に同じことを勧めることは筋違いです。領有権の争いのあるところでの一方的現状変更はやめるべしというのが正論でしょう。

 この問題では、米国が既存の海洋秩序堅持のため、対中対立も辞さずという姿勢をとることが利益になります。米国が安易に中国に歩み寄るのが問題です。

  
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