2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年4月20日

 米ワシントン・ポスト紙のコラムニストであるイグネイシャスが、3月15日付の同紙で、南シナ海仲裁裁判に際し、中国が新たな防空識別圏の設定などを行なうことや、それをめぐって対立が一層激化する可能性があることを、米国内の動きと合わせて論じています。要旨は以下の通りです。

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南シナ海問題が“八月の砲声”になる危険性

 オバマ政権は、南シナ海に関して中国と危険な対決に向かいつつある。対立は過去3年間に積み重ねられてきたもので、中国は米国の警告にもかかわらず、係争水域に人工島を建設したり、ミサイルやレーダーを設置したりしてきた。今春、ハーグの仲裁裁判所は、中国の海洋主権の主張は「過剰」であるとの判決を下すと予想され、米中の緊張が最高潮に達する可能性がある。

 キャンベル元国務次官補は、「この問題は、すべての当事者が慎重でなければ、『八月の砲声』になりかねない」として、第一次世界大戦を引き起こした誤算の連鎖に言及しつつ、「米政権は、過去の警告をどう実行させるかという新たなレッドライン」に直面していると述べる。

 習近平主席は、昨年9月の米中首脳会談で「中国には軍事化の意図はない」と明言したものの、パラセル諸島ウッディー島には地対空ミサイルを配備し、スプラトリー諸島クアテロン礁には軍用レーダーを配備するなどの矛盾した行動をとって、米側の警告をことごとく無視してきている。


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