いやはや正直なことを言うと、絵に描いたような、のどかな田舎の駅前風景の府中駅。鎌倉さんが出迎えてくれて、スピングルカンパニーの社屋の前にどぉんと建てられた巨大なスニーカーのオブジェを見るまでは、失礼ながら「本当にここでスピングルムーヴのスニーカーが作られているの?」と、いささか不安になってしまったのは確かであります。
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スピングルムーヴの工場は、道路を挟んで社屋のすぐ目の前にある。最新ファクトリーといった感じはしなくて、TVドラマや映画に出てくるような昭和の町工場のあの雰囲気そのものだ。世界がうらやむジャパンクオリティー。そんなイメージが、この気取りのない庶民的な町工場の佇まいと、すぐには結びつかない。
ちょうどワレワレがオジャマした時間は下校時刻と重なり、近所の小学生たちが歩いていた。実はスピングルカンパニーの親会社であるニチマンは創業八十四年になる老舗のゴム総合メーカーで、元々学校の上履きやゴム長靴を製作していた。しかしある時期、海外の安価な輸入製品や平成不況のあおりを受けて工場閉鎖の危機に陥ったのである。