2024年11月22日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2016年5月12日

 日本から中国に輸出された物は、中国国内で消費される物もありますが、3割程度は加工されて米国等に輸出されていく物です。日本製品は品質は良いが値段が高いので、心臓部の部品だけは日本から輸入して、それ以外はアジアで調達して中国で組み立てて米国に輸出する、という企業が中国には数多くあるからです。

 つまり、中国人が消費を減らしても、米国人の消費が減らなければ、日本から中国への輸出の一部は無傷だ、という事になります。リーマン・ショックの打撃が大きかったのは、米国の不況で日本の対中国輸出が減った事も一因でしたが、今回は逆のことが起きるわけです。

人民元安になっても影響は小

 リーマン・ショックが日本経済に大打撃となった一因は、ドル安円高を招いたことです。リーマン・ショックで米国が不況になると、FRB(米国の中央銀行)が金融緩和をしました。米国の金利が低下したのです。これにより、日本の投資家が米国国債を買わなくなりました。従来は「米国国債への投資は、為替リスクがあるから望ましくないが、日本国債より遥かに金利が高いことを考えれば実行する価値がある」と考えた投資家たちが、円をドルに換えて米国債投資を行なっていましたが、そうした投資家が消えてしまうと、ドル買い需要が減少し、ドル安円高になってしまったのです。

 米ドルは基軸通貨であり、日本の貿易の多くはドル建てで行なわれていますので、ドル安円高は日本の輸出企業にとって大きな打撃となります。

 しかし、仮に中国経済が失速して、中国の中央銀行が金融を緩和して、円高人民元安になったとしても(日本と中国の間の投資には規制が大きいので、円高人民元安になるか否か、わかりませんが)、日本の貿易には大した打撃にならないでしょう。これもリーマン・ショックとの大きな違いの一つです。

中国経済の失速は資源安を通じたメリットも

 中国経済は、GDPこそ米国より小さいですが、資源消費量としては圧倒的に世界第一です。その中国の経済が仮に失速すれば、世界中の資源価格が暴落することは間違いありません。

 日本は資源に乏しく、その多くを輸入に頼っていますから、資源価格の暴落は日本経済にとって非常に大きなプラスになります。


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