このハマス治安部隊が配備される数日前、イスラエルのネタニヤフ首相はエジプトとの国境沿いに新たな防護壁を建設するという決定を称賛。「この防護壁がなければ、シナイ半島から数千人に上るIS戦闘員が侵入してきただろう」と述べたが、防護壁とはハマスの治安部隊展開を指したものだ。
イスラエルの生存権を認めない
ヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府と一線を画す武闘派のハマスはイスラエルの生存権を認めず、敵対関係を続けてきた。イスラエルは09年と14年にハマス攻撃のためガザに地上侵攻し、パレスチナ人3500人以上を殺害、イスラエル側にも約80人の死者が出た。
ハマスはイランの支援を受け、エルサレムなどにも届く長距離のロケット弾を開発、イスラエル側の懸念が深まる大きな要因になっている。特に昨年9月以降、ヨルダン川西岸などでパレスチナ人によるイスラエル人襲撃、それに対するイスラエル治安部隊の攻撃が続発。ハマスとイスラエルの緊張も次第に高まっていた。
ハマスとエジプトのシシ政権との関係も悪い。ハマスは元々、シシ大統領が軍事クーデターで倒したモルシ前大統領の出身組織「モスレム同胞団」のガザ支部。このため親組織を倒したシシ政権とは関係が悪化し、武器や補給物資の外部との唯一の搬入口であるエジプトとの境界検問所も閉鎖されたままだ。密輸トンネルも大半がエジプト軍の管理下に置かれている。