2024年4月20日(土)

WEDGE REPORT

2016年5月6日

 イスラエルにしてもISのテロの矛先がイスラエルに向けられるのは「時間の問題」という脅威に直面している。ガザに「シナイ州」の戦闘員が入ることになれば、イスラエルの安全保障が重大な危険にさらされてしまう。そうした思惑がシシ政権を通じてハマスを動かしたと言えるだろう。

ガザへのIS侵入は容認できない

 ISから不信心者の集団とレッテルを張られているハマスにしても「シナイ州」のガザ浸透は容認できない。それでなくてもガザ地区内にISシンパである「イスラム国の支持者たち」という過激組織が急速に台頭、対応を迫られている。エジプトから「シナイ州」が入り込んでくることはハマスの存亡にもかかわってくるからだ。

 しかも、東京23区の6割という狭い面積に180万人のパレスチナ人が居住するガザはイスラエルとは高い塀によって隔離された“巨大な監獄”。イスラエル側の検問所が閉鎖されている状況では、エジプト側の検問所に物資の補給を依存せざるを得ない。しかしシシ政権が検問所を閉鎖しているため、経済的な困窮に追い込まれているのが実状だ。

 ハマス側には、ガザの境界の警備強化というシシ政権の要求を受け入れ、その見返りに検問所を再開させたいとの切羽詰まった事情があるのだ。ISの恐怖が生んだあり得ない“同盟”である。


  
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