3者の思惑と実利が合致
この3者が“同盟”を組むことになったのは、それぞれの思惑と実利が合致したからに他ならない。3者にとって共通の敵であるIS勢力に対抗する必要に迫られているからだ。
ガザ地区やイスラエルに接するシナイ半島はISのエジプト分派組織「シナイ州」の拠点だ。「シナイ州」は2014年11月に反政府過激派がISに忠誠を誓い、設立された。それ以降、シナイ半島の町や村落、エジプト政府軍の陣地、検問所などへの奇襲攻撃を続け、政府軍との戦闘を繰り返してきた。
特に昨年10月末、シナイ半島の世界的な保養地シャルムエルシェイクから離陸したロシア旅客機に爆弾を仕掛けて空中爆破、240人を殺害したテロ事件を起こし、政府軍への攻撃をさらに激化させている。
クーデターで政権を奪取したエジプトのシシ政権の看板は治安の安定である。ところが「シナイ州」を壊滅できないどころか、首都カイロでもテロが頻発する事態に国民の信頼は低下しつつある。
シシ政権はとりわけ、「シナイ州」とガザのIS勢力が合体することを懸念している。「シナイ州」のこれ以上の勢力拡大は治安の悪化に拍車を掛けることになるからだ。治安の回復ができなければ、どん底にある観光産業の復活は期待できない。早急に「シナイ州」の壊滅が必要なのだ。