2024年11月25日(月)

ネット炎上のかけらを拾いに

2016年5月17日

 「オプション」には教育学部総合教育学科の4年生が「お子様の夏休みの宿題をお手伝い」というものもあり、ファミリーも対象としているという建前はつくろってはいるものの、全体的な印象としては、完全に接待。

 で、これについて「じゃあイケメンの男子学生だったらどうだったんだ」という疑問は当然出ていたが、それを考えるときに有用なのは、「それではなぜ、H.I.Sはこのキャンペーンを『東大美女図鑑』の女子大生で成り立たせようとしたのか」だろう。実際にどうかはさておき、「男子じゃなくて、女子をわざわざ選んだんだよね」と思わせている時点で、そりゃ突っ込まれるだろう。

 そもそもこの企画が炎上している理由は、男性社会の中で望むと望まないとに関わらず「接待役」「サポート役」という“性的役割分担”を女性が担わされてきたという差別的な構造を再現してしまったところにあり、そこに不快感を覚えた人たちがいることだ。

 「接待役」の5人中、たとえば3人が男性であったらこの企画は炎上しなかったかどうかと考えてみる。おそらく炎上しなかっただろう。5人中男性が1人だけだったら炎上した可能性が高い。構造を成立させるのは数である。

糾弾をやめられない心理の裏にある、
クラスタの連帯

 H.I.S.は炎上を受け、即日キャンペーンの中止を発表。「ご不快な思いを感じさせる企画内容でありましたことを、深くお詫び申し上げます」というお詫び文を出している。

 こういった企画を立てておいて、即日撤回するなんて往生際が悪い、むしろ悪手だという批判もあった。田嶋陽子氏はテレビ番組で「社会全体がフワフワして、ネットで何か言われたからってすぐ引っ込めちゃう信念のなさが気に入らない」と語ったという。確かに企画の即日撤回は、批判を考慮に入れていなかったことを明るみに出しただけだった。

 何かにつけてピリピリムードの現代日本のインターネット上において、この企画がやり玉にあげられないわけがない。目をつけられないわけがない。批判を受けての即日撤回は、企業としてリスクヘッジが甘いというか、現場担当者にしろ企画決定権のある方々にしろ、もっとネット上の「不寛容さ」を学ぶべきだ。


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