既存店の売り上げを伸ばす
喫茶店を経営していた創業者の宗次德二氏の妻・直美さんが作ったカレーが人気になり1978年に壱番屋を創業、以来、家庭の味に近いカレーが受けて国内の店舗を増やしてきた。浜島社長は「過去に何度かウチのまねをしたところがあるが、生き残っているのはウチだけだ。成功した理由は仕組みとか組織ではなく、根本的な理念を作り上げた宗次夫妻がいたからこその壱番屋だ」と、第一に創業者の功績を挙げる。「各店舗では自社工場から温めるだけで良いカレーソースが配送されるので、店の段階では味付けは要らない。カレーはいろいろな食材を包み込む力があるので、その強さを最大限引き出した結果であり、これという特別な秘密はない」と話す。
第5次中期経営計画(2015年5月~17年5月)を進めているが、売上、出店目標は一切作らないという。「東日本大震災の前までは目標を作っていたが、震災以降は自然の威力の前に無力感を感じて計画を作るのをやめた。目標数字を作ると、達成するために無理をしなければならなくなる。既存店の売り上げを前年より少しでも伸ばすようにしている」。
店の特徴は、メニューが豊富なこととトッピングの多さがある。スパイスの利いた切れ味はないが、しばらくするとまた食べてみたくなる“最大公約数”を狙った「懐かしい味」が魅力になっているようだ。
ハウスと共存共栄
壱番屋の2番目の大口株主だったハウス食品グループ本社が、昨年12月にTOB(株式公開買い付け)により壱番屋の株式の51%を取得、壱番屋はハウスのグループ傘下になった。「ココイチ」は100店舗くらいになったころから、ハウスの業務用カレールーに調味料やスパイスを加えたものをハウスの工場で製造してもらっていた。現在は壱番屋の自社工場が栃木、一宮(愛知)、佐賀の3カ所にあるが、工場を作る際にはハウスにも協力してもらうなど「生産面でのパイプは太かった」という。
ハウスとの資本関係について「不安なことは何もない。ハウスとの関係も続けていく」と指摘、共存共栄の間柄だ。ハウスは業務用、家庭用ともにカレールーでは圧倒的なシェアを持っており、外食の「ココイチ」が伸びればルーを提供するハウスも売り上げ増につながる。