成果主義での目標は上司から与えられる。あるいは部門の目標と個人の役割が設定された上で、社員自らが具体的な目標を設定して上司と話し合ってコミットする。目標というからには、そのテーマの結果が予測可能で客観的に評価できるものでなければならない。「どうなるかわからないけどやってみてくれ」とか「ちょっと試してみたいんですが」といったテーマでは、明確な目標を設定してコミットすることができない。
米国式の成果主義を導入した経営者は、財務的な数値の改善を重視して研究開発部門にも効率を求める。研究開発部門の技術者が、短期的に確実に成果を出すことが難しい試行錯誤が必要な長期的なテーマやリスクのあるテーマにチャレンジしなくなってしまうと、イノベーションのシーズを生み出せなくなってしまう。これは製造業にとって致命的だ。時間をかけて革新的なテーマにチャレンジするよりも、手っ取り早く製品化できる開発を優先させるようになって、他社の製品にちょっと手を加えたような製品ばかりが出るようになる。
成果主義が不正を生む
成果主義は単独でではなく、株主を重視する米国式経営の一部として日本に持ち込まれた。投資効率を追求する株主を重視しすぎると、経営者は短期的な経営指標だけを追うようになる。製造業に共通する事業目的は「顧客に良い製品を提供して利益を得る」ということだろう。そして得た利益を株主と社員に還元する。しかし株主を重視するあまり顧客と社員を忘れて、「利益を得て株主に還元する」ことだけを目的とするようになると経営は不正に走る。社員にも財務的な指標に偏った成果を求め、企業全体が不正を製造する組織に変質していく。