最初は簡単な例からはじめましょう。「人々の所得額と消費額を調べたら、消費額が多いほど所得額も多いことがわかりました」。という調査結果をみて、「消費をするほど豊かになれるので、豊かになるために消費をしよう」という人はいませんよね。所得額が多いから消費額も多い、という因果関係が明らかだからです。
犯罪が多いから警察官を雇っているのだが……
では、冒頭の警察官の事例はどうでしょうか? たしかに警察官の数と犯罪の数は、似たような動きをしています。しかしそれは、警察官が多いから犯罪が多いのではなく、犯罪が多いから警察官が多いのです。「犯罪が少ない街は、税金が入ると公園を作るが、犯罪が多い街は税金が入ると警官を雇う」というわけです。消費と所得の関係と同じですね。
しかし実は、それより遥かに重要な要因があります。人口の多い街は警察官も犯罪も多いのです。人口が親で、警察官数と犯罪数は子供だ、というわけです。したがって、人口千人当たりの警察官数と人口千人当たりの犯罪数を比べる必要があるのです。人口千人当たりで比べれば、こうした問題は解消されますので、「犯罪が多いから警官を雇っている」という真実に近づく事ができるでしょう。
株価が下がるから景気が悪化するのか?
株価は景気の先行指標だと言われています。実際、内閣府の作っている景気先行指数の計算式に株価が組み込まれているのです。では、なぜ株価は景気の先行指標なのでしょうか? 株価が下がると景気が悪化するのでしょうか?
株価が下がると、景気に悪影響があるのは確かでしょう。株式を保有している富裕層が倹約するようになるからです。株式を持っていない庶民も、何となく景気が悪そうな気がして贅沢を控えてしまう、という事もあるかもしれませんね。しかし、そうした効果は限定的で、景気を動かしている数多くの要因の一つに過ぎないでしょう。