高級官僚氏は元外交官志望
アレックスとはその後も何度か道中一緒になり、さらに二度同じ宿になった。宿ではワインを飲みながら遅くまで語り合った。彼を知れば知るほど尊敬するようになった。彼の経歴を整理すると彼は55歳。私より6歳年下ということになる。彼は大学卒業後3年間の兵役(現在は2年間だが昔は3年だったとのこと)を経て25歳で法務省に任官。
朝陽に赤く輝くIrache修道院
韓国では高級官僚は勤続30年になると一か月の休暇が取れる。それで20日間でピレネー山脈の登山口、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーから聖地サンチアゴまで750kmを踏破する計画を立てたという。
ある時アレックスがスペインの田舎の人間とスペイン語で会話しているのを聞いて不思議に思った。スペイン語の文法が正確なのだ。聞くと学生時代は外交官を目指してスペイン語を3年間学習したという。外交官試験には失敗したが官吏の高等文官試験には合格したという。エリート官僚なのにそんな過去のことも率直に笑いながら話すところに彼の懐の深さを感じた。
彼のソウルでの日常は毎日仕事に忙殺されて自分の時間が持てないのが悩みだという。時間があればじっくりと本を読みたいと渇望していたので巡礼の旅にも数冊持参しているという。そして彼は「もう少し仕事に余裕があれば、国家の長期的戦略や大きな課題についてじっくり思索できるのですが」と残念そうに言った。単なる官僚というよりも国士タイプの人物である。
修道院にある「ワインの泉」、水道栓から赤ワインが出てくる
現在日韓両国は国民レベルでも反日・嫌韓というネガティブな感情が両国の友好親善の大きな障害になっている。韓国の反日的ニュースを見聞きするたびに悲観的になってしまうが、アレックスのような素晴らしい知識人がいることが救いである。