奇しくも爆発を起こした福島第一原発一号炉と同じ年齢である福田さんにとって、ダルマ市や盆踊りは「じいちゃんから貰った時計のようなもの」だという。
顧客に故郷を奪われた心境
「子供の頃は、じいちゃんや親たちがやるのを見てて、やがて俺たちが中心になってやるようになった。まあ、形見みないなもんだよな」
同時に、原発も当たり前に存在するものだった。
「だって、双葉にいるときは(東電は)顧客だからね」
顧客に故郷を奪われた心境は、どんなものなのか。
「最初はやられたと思ったけど、やった方もやられた方も、どうしょうもないよね。交通事故に遭ったようなもんだ。間違って子供を轢いちゃった人にさ、子供を返せっていくら言っても仕方ないじゃない」
父の転勤途上で生まれて、日本全国を転々としてきた私には故郷と呼べる場所がない。いわゆるデラシネというやつだ。デラシネである私に故郷喪失の痛みがわかるかと言われたら、正直なところわからない。当然、郷土の祭りを復活させなくてはならないという使命感も、わからない。そして「ピクニック気分」で家を出て、そのまま丸4年以上自宅に帰れないという境遇も、もちろん実感することはできない。
いったい私は自分の中の何を足場として取材を継続するべきなのか、いまだによくわからないのだが……。
終始突慳貪だった福田が別れ際、「いろいろイベントやるから、また来なよ」
と言った。
女優が「忘れない」とつぶやくCMを思い出した。
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