WEDGE REPORT

2016年7月2日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

“Play the race card”の意味は

多くの人で賑わうメトロポリタン歌劇場(筆者撮影)

 だが純粋に1ダンサーとして、プリンシパルに相応しい実力かどうかというのは賛否両論。いや、はっきり言うと長年バレエを見てきた人々の間では、「彼女が白人だったなら、今でもコールド(群舞)の一員だっただろう」という意見が主流なのである。

 私も20回以上彼女の踊りを見たが、クラシカルダンサーとしての技術に難があり、表現にも深みが感じられなかった。いくら何でもプリンシパルはないだろうと信じていただけに、昨年のアナウンスメントを聞いたときはちょっとショックだった。

She played the race card.

 と、ある熟年のバレエファンの知人は口にした。

 Play the race card.とは、主に黒人がマイノリティであることを利用して、有利な立場に自分をもっていくことを意味している。

 でもそんなことは、とてもおおっぴらに口にできない。熊川哲也氏もどこかに書いていたが、もともとクラシックバレエ界とは白人至上主義の世界である。その中で、ようやく黒人プリマが誕生したのだ。

 これまで黒人男性のプリンシパルはデズモンド・リチャードソン、カルロス・アコスタなど数名いたが、女性では初めての快挙とあって、とてもではないがいちゃもんなどつけられる空気ではないのだった。

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