人気低下に悩むバレエ団
メトロポリタン歌劇場のホール内(筆者撮影)
アメリカンバレエシアターは、北米でナンバーワンのクラシックバレエカンパニーとして知られてきた。
バレエに全く興味がない人でも、ミハエル・バリシニコフの名前は聞いたことがあるだろう。1974年にソビエト連邦(当時)から亡命したときに、彼を団員として迎えいれたのがこのABTだった。
バリシニコフが舞台に立つ日には、ABTの公演チケットは毎回完売で、当日限定販売の立見席を求めて、人々は前夜から列に並んだというから、バレエもロックコンサート並みの人気だったのだろう。
だがこのところ、会場では空席が目立つようになった。赤字続きで運営にも四苦八苦しているという噂である。
その理由の1つは、ダンサーの質の低下で集客がままならなくなったこと。
特に女性のプリマの衰退は著しく、芸術監督のケヴィン・マッケンジーは、英国ロイヤルバレエ、ボリショイやマリインスキーバレエなど、海外のスターダンサーたちを一本釣りしてゲストプリンシパルとして迎え、どうにか体裁を保ってきた。
だがその予算も尽きたのか、今シーズンはほとんど子飼いのダンサーだけで勝負をしている。ミスティ・コープランドのプリンシパル昇格も、そんな事情の中で行われたことだった。