2022年9月25日(日)

WEDGE REPORT

2016年7月2日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

タイムズスクエアを行き交う人々(iStock)

アメリカ社会の本音と建前

 アメリカ社会には、現在でも人種差別が歴然と存在する。その一方、マイノリティの成功者を必要以上に持ち上げることで「だから自分たちはフェアなのだ」と主張してバランスを取ろうとする一面もある。

 アメリカ社会の本音と建前といったところだろう。ミスティ・ブームは、こうしたアメリカ人の罪悪感とうまくマッチしたのではないだろうか。

 ちょっと飛躍するけれど、ドナルド・トランプのような極端な思想の人間が大統領候補に挙げられた背景には、Politically Correct(直訳は政治的に正しい、だが倫理的に正しいというニュアンス)でいることを強いられ、納得のいかないままに沈黙してきた白人社会の欲求不満も、存在しているのに違いないと思う。

ミスティブームはABTの経営不振を救えるか

 好意的に考えると、ミスティの存在は、子供たちにとっては良いお手本になるだろう。次の世代の黒人の子供たちに、夢と勇気を与えてくれることは疑いもない。またこれまでアメリカ社会が黒人にしてきた仕打ちを考えると、黒人プリマが少しぐらい贔屓されてもまあ良いのではないか、という気にもなる。

 だが純粋にバレエファンとしての感想を聞かれたら、他にもっと昇格に相応しいダンサーがいたのに、と思うのが正直なところだ。

 ABT初の日本人ソリストだった鍛冶谷百合子さんが、昨シーズンを最後にパートナーと共にヒューストンバレエに移ってしまったのも、今のABTの経営陣の方向性に見切りをつけてのことに違いない。

 ミスティ人気は、いつまで続くのか。彼女がABTの経営難を救うことができるのだろうか、長期的に見守っていきたいと思っている。

  
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