2024年11月22日(金)

ASEANスタートアップ最前線

2016年7月12日

現地のエコシステムもスタートアップも
まだまだ始まったばかり

phandeeyarからヤンゴン中心地を臨む

 無論、スタートアップのエコシステムもまだまだ発展途上だ。とはいえ、スタートアップのGatewayとなるシードアクセラレーターは既に存在していた。今回の旅では、ヤンゴン唯一のシードアクセラレーター・Phandeeyarを訪問した。2014年にオーストラリア人のDave氏が創設してまだ今年で2年目ということである。主催者の一人のJes(彼はデンマーク人)に会って話を詳しく聞いたが、スタートアップの数も徐々に増えているという。ここの施設に籍を置いているスタートアップは、ローカルが多いが海外からチャレンジする起業家も一定数いるということだ。投資家の訪問数も今年に入ってから増えているということだ。アジアからの訪問が多いのかと聞いたところ、欧米からも同じくらい多いという。どの国も、アジア最後のフロンティアから目を離さないわけがない。

 では、起業家はどんな経歴の方が多いのだろうか。今回の滞在で、複数の起業家と会ったが、海外で成功してから戻ってきている、少しシニアな方(30代後半以上)が多かった。生まれはミャンマーだが、育ちはシンガポールやオーストラリア、そのまま就職して自分でIT関連のビジネスを立ち上げ成功してから戻るパターンが多かった。とある起業家は、オーストラリアで自分のビジネスを展開していた。毎年ミャンマーに里帰りをしていたが、2年前と1年前、その1年間の変化が、過去のどの時点よりも(特にIT領域で)急速に発展していたことを感じ、今がチャンス!と、ミャンマーに戻ることを決意し、現在は複数のウェブサイトを起ち上げている。

 Phandeeyarや現地のスタートアップの友人に紹介してもらいながら、ローカル出身のファウンダーにも会ったが、主観的な意見になってしまうが、彼らが成功するためには3つの壁があると感じた。

 一つ目は英語の壁。やはり、ローカル出身だと、英語力が劣り、海外の資本家とのコミュニケーションが円滑にできないという点がある。もちろん、ローカルの資本家から事業資金を得て拡大できる可能性も十分にあるだろうが、言語能力がネックに調達先が限られてしまうことは決して良くない。

 二つ目は、資本主義の壁。株式会社がどういうものか、財務会計や企業価値の考え方、こういった基本的な知識が、今や他の国では当たり前のような基礎知識として普及しているが、ローカルの若手ファウンダーは、他のASEAN諸国の若手ファウンダーと比べると前提の知識量が劣っているように会話から感じた。

 最後の3つ目は、強欲の壁だ。ASEAN各国のファウンダーは、鼻息荒く、Greedyに、成功したい!お金もちになりたい!がごとく、アグレッシブに事業を進めるが、逆にミャンマーの起業家陣は、総じて落ち着いた印象を受けた。仏教国の国民性がそうさせているのであろうか。日本人の心持ちと近いところがあり、非常に接しやすいものの、時にはオラオラ系のノリで事業を引っ張っていってほしい。残念ながら、そこまでカリスマ性のあるローカルのファウンダーには今回の旅で出会うことはできなかった。

このように、ミャンマーのテック系スタートアップシーンはまだ産声を上げたばかりである。勤勉な国民性も日本人と似ているため、個人的には、日本人と相性が良いのではないかと感じている。事実、様々なセクターで日系企業が進出しているようで、ミャンマー市場からは目が離せない!

  
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