これに対して賛成派は「何者かが大変な危険をもたらしている時、警官には自分たちを危険な状況にさらす義務はない」「スナイパーを配置するのと変わりはなく、法的に問題とする法廷はないだろう」と肯定的に評価。ニューヨークなど他の市警もロボット使用を前向きに検討する考えを示している。
警察はどこからこうしたロボット機材を購入しているのか。それは国防総省(ペンタゴン)からだ。国防総省はアフガニスタンやイラクの戦場用に軍需産業とともにドローンやロボット兵器を開発し、その一部が警察に売却されている。オバマ政権も警察活動が強化されるとして傍観しているのが現実だ。
ファーガソンから始まった
こうした警察の軍事化が始まったのは2年前の8月、ミズリー州ファーガソンで発生した白人警官の黒人青年射殺事件だった。警察は大規模な抗議行動に対して、暴動鎮圧用のフル装備で鎮圧した。装甲車を出動させ、発煙弾、催涙ガス、ライフルを使用するなど警察の軍事化が浮き彫りになった。
それ以降、イリノイ、オハイオ、アリゾナ、ウイスコンシン州など全米で白人警官による黒人射殺事件が続発し、差別社会や放置される銃規制、そして警察の軍事化がたびたび問題になった。しかし一向に改善される兆しはない。
黒人差別の是正や銃規制の強化を訴えてきたオバマ大統領は「米国が分断されることはない」として、人種間のあつれきを乗り越える必要性を強調し、ダラスの追悼式の演説でも米社会の融和と団結を訴える見通しだ。
しかしワシントン市警のチャールズ・ラムジー元本部長は「今何が起きているかを見れば、われわれは歴史の重要な岐路にあるのは一目瞭然だ。米国は火薬樽の上に座っている」と述べ、米社会が深刻な分断の危機に瀕しているとの見方を明らかにしている。米国に暴動と鎮圧の連鎖に彩られた暑い夏が到来しようとしている。
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