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2016年7月14日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所研究部長

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。*記事はすべて筆者の個人的見解であって、筆者の所属組織とは無関係です。

若者世代は選挙に行かないことによる
「不利益」を理解しているか

 ところで、18歳・19歳有権者を除いた投票率を大雑把で恐縮であるが計算してみると、まず18歳と19歳の有権者数が約240万人。その投票率が45.45%であるから投票者数は約109万人と求められる。全体の有権者数は10,649万人で、その投票率が54.70%なので投票者数は5,825万人。18歳と19歳の有権者を除いた有権者数10,409万人に対して投票者数は5,716万人であるので、投票率は54.91%と算出できる。つまり、前回の参院選と直接比較可能な投票率で比べると、今回の方が4%ポイント弱高かったと言えるだろう。つまり、今回の選挙は18歳・19歳世代よりその他の世代で関心が高かった。実際には、総務省が公表する年代別の投票率を待たないといけないのだが、この試算を前提にして考えると、若者世代で投票率が低く、高齢世代で投票率が高い従来の年代別の投票率が再現された可能性が高い。高齢世代で投票率が高まった理由としては、安倍首相が目論んでいるとされている憲法改正に対する懸念が挙げられるだろう。

 若者世代が投票に行かないのは様々な理由があるだろうし、結果責任は共有されるべきなので、今後どのような結果になったとしても自業自得との指摘もあるだろうが、若者世代は選挙に行かないことから生じている不利益を正確に認識しているのだろうか。もし、投票に行くことから生じる利益よりも投票に行かないことから生じる不利益の方が大きい場合、投票に行くことの利益を教えるのみで、不利益に関する情報が届けられていないとすれば、若者世代の投票行動が歪められた可能性がある。

世代間格差の実態

 それでは、若者世代が選挙に行かないことから生じている不利益とはどういうものがあるだろうか。もっとも代表的なものは世代間格差の深刻化であろう。

 生涯純税負担率4を推計することで世代間格差の大きさを見た図2によると、生涯純税負担率は、25歳世代までの概ね22%から30歳世代から45歳世代では緩やかに低下し19%となっている。それより高齢の世代では急速に低下し、例えばいわゆる「団塊の世代」5では9%から11%となっており、若年世代の負担率はその2倍に達している。つまり、若い世代が投票に行かないために、例えば生涯年収が3億円であるとすると、若者世代は高齢世代に比べて3,000万円程度多く負担する、要すれば損をしていることになる。

図2 世代間格差の実態
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4:生涯純税負担率とは、生涯負担額(一生涯の税や社会保障負担)から生涯受益額(一生涯の主に年金等の社会保障給付であり公共サービスは含まない)を控除して定義される生涯純税負担額(=生涯負担額-生涯受益額)を生涯所得で除したものである。したがって、生涯純税負担率がプラス=負担超過、生涯純税負担率がマイナス=受益超過を表す。なお、過去及び将来分の受益負担額については利子率で現在価値化している。

5:団塊の世代とはここでは1945年から1950年の間に生まれた世代を指している。

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