2023年1月31日(火)

海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年7月19日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

米軍最高司令官

 第3の課題は、米軍最高司令官になる資格です。クリントン候補は、米国史上初の女性大統領を狙います。同時に、初の女性の米軍司最高令官になるわけです。有権者の中には、女性は感情的であり、弱いリーダーであるというステレオタイプ(固定観念)を抱いている有権者がいます。クリントン候補が、仮にエリザべス・ウォーレン上院議員(民主党・マサチューセッツ州)を副大統領候補に起用した場合、ステレオタイプは2倍になります。

 クリントン候補は、女性に対する否定的なステレオタイプを弱める必要があります。その役割を果たすのは、任期終盤で50%前後の支持率を得ている現職のオバマ大統領です。同大統領が全国党大会の演説でクリントン候補が米軍最高司令官としての資格があると明確なメッセージを送ることは間違いありません。

 一方、トランプ候補です。同候補は、クリントン候補やオバマ大統領から性格を批判され、核のボタンを委ねてよいのかと疑問を投げかけられています。同候補の性格に懐疑的な有権者に対して、共和党全国大会で誰が説得役になれるのでしょうか。

 前で述べましたが、共和党の2人の大統領経験者は全国党大会に欠席を表明しているのです。下院外交委員会に所属していたマイク・ペンス インディアナ州知事がトランプ候補の米軍最高司令官としての資質に訴えても、オバマ大統領ほど説得力がないことは明白です。共和党の歴代の大統領の全国党大会欠席は、党内の統一のみならず米軍最高司令官とも絡んでくるのです。

文化的多様性

 第4の課題は、人種及び民族における文化的多様性です。女性、ヒスパニック系、アフリカ系、若者及び同性愛者といった「異文化連合軍」の票の獲得を目指すクリントン陣営は、全国党大会における人種や民族の文化的多様性の欠如という課題は抱えていません。党大会に参加する代議員団は、多様性に富んでいるからです。

 一方、この課題に関してトランプ陣営は深刻です。今回の共和党全国大会は、これまでにも増して「白人の党大会」になる可能性が高いからです。

 2008年共和党全国大会でのエピソードを紹介しましょう。筆者が党大会の会場となった建物の最上階から演説を聞いていると、大会のスタッフがアプローチをしてきたのです。このスタッフは、「名誉あるゲスト」のチケットを筆者に見せると、席を移動して欲しいと言うのです。名誉あるゲスト席は、アイダホ州の代議員団の真後ろの席でした。彼女は、その一画に非白人を集めていたのです。しかも驚いたことに、真横にテレビカメラが設置されていました。トランプ陣営もこの課題に対処するために、全国党大会で米国社会らしく人種や民族の多様性があるような演出をする可能性があります。

 以上、4つの課題に加えて、全国党大会における代議員団の情熱や熱狂さの度合いも、本選挙を占ううえで重要なバロメーターになると、筆者はみています。


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