科学で斬るスポーツ

2016年8月1日

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 シライ3の説明の前に体操のD難度、G難度、H難度とは何なのかを説明しよう。これは技同様に国際体操連盟が認定するもので、基本的にAから0.1点ずつ加点され、H難度は0.8点。体操の演技は「前方系跳躍」「後方系跳躍」など4つの技のグループから最低一つずつ行い、最後の決め技を含み最大10個の難度の高い技が採点の対象となる。しかし、すべてがH難度にはできないような上限設定もある。難度A~Hなど加点を基本とする採点は「D得点」と呼ばれ、「足先が伸びていない」「倒れた」などの減点を中心とする出来栄え点「E得点」を合算して決められる。極めて複雑な仕組みだ。

シライ3(広報伸身2回宙返り3回ひねり)のイメージ図

シライ3は、内村得意のリ・ジョンソンを進化

 シライ3は、実は内村選手が得意とする「後方抱え込み2回宙返り3回ひねり」(リ・ジョンソン)を進化させたものだ。回転やひねりをする時は、体を抱えると、回転しやすくなる。物理でいう慣性のモーメントが小さくなるからだ。この大技を回転しにくい伸身で行ったのがシライ3。ひねりというのは頭-足の軸での回転のことを差し、イメージは寝返り。リ・ジョンソンはG難度だが、シライ3がH難度になったことからもその難しさがわかる。

 内村のリ・ジョンソンは、高さと速さが際立っていた。体重の10倍以上と言われる強い蹴る力を巧みにいかし、空中に浮かぶ時間は1.1秒。最高点の高さは2.35mに達し、他の選手より約15cm以上も高い。こうした高さが生み出す時間的余裕が、演技の出来栄えを引き立てる。宙返り、ひねりの回転も速く、審判が判定ミスしたこともあったほどだ。回転、ひねりの数が増え、技が高度化する中で、審判の判定ミスを減らそうと、IT機器を使って判定の手助けをする試みも始まっている。

iStock

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