日本の卓球の躍進が目覚ましい。5月3日まで中国・蘇州で開催されていた、卓球の世界選手権大会(個人戦)では、ベテランと若手が大会を盛り上げ、優勝こそなかったものの、混合ダブルスの吉村真晴・石川佳純ペアが38年振りに銀メダルを獲得、男子ダブルスの松平健太・丹羽孝希ペアが銅メダルに輝いた。注目の中学生コンビ、平野美宇(みう)、伊藤美誠(みま)は、ペアを組んだダブルスとシングルに臨み、ダブルスではベスト32にとどまったが、シングルでベスト8に入った伊藤に新人賞が贈られた。
(写真:ロイター/アフロ)
日本は現在、世界ランキング100位以内に男女計24人が入り、有望な若手も次々に登場している。背景には、選手・指導層のすそ野拡大、特に2002年以降に始まった小学生のナショナルチーム創設、小学生の選手・指導者を対象とした研修合宿、日本オリンピック委員会(JOC)の「エリートアカデミー」などの強化育成が実りつつあることが大きい。1950~70年代まで世界のトップクラスを走っていた日本。その後、世界の先頭を走り続ける中国の背中がようやく見える距離まで近づいてきた。日本の躍進の秘密を探る。
若手の戦略的育成強化が花開く
選手のすそ野拡大の種が巻かれたのは、1980年代。日本卓球協会は、日本代表、その予備軍となるジュニアの下に「カデット」(13才以下・14才以下)「ホープス」(小学生6年生以下)「カブ」(小学4年生以下)「バンビ」(小学2年生以下)の年代別の全国大会を設けた(卓球人気を巻き起こした福原愛もここから日本代表へと登りつめて行った)。卓球の人口は着実に増え、指導者も数だけでなく、その質が大きく向上した。
「年齢別の強化合宿や講習会、低年齢層からの強化策は、小さい時からの有望な選手の掘り起しになっているだけでなく、その成功体験が、卓球への強い動機づけにつながっている」と専門家は見る。最初から上を狙わせるのではなく、段階的に技を磨かせることは、戦略的で科学的な育成強化の基盤となった。
もう一つ、卓球は身長が低い、小学生の時から活躍できるという競技特性がある。他の競技では、シニア選手と大きな体力差が結果にでてしまう。しかし、卓球は、もちろんフィジカルも極めて重要であるが、わずか2.7グラムのボールを使い、動体視力、俊敏性、反射神経など「技」「うまさ」がものをいうスポーツだ。小さいながらもボールに対するセンスを磨き、大人と対等に戦うことは十分可能である。実際、日本代表の合宿は、年齢別ではない。小学生は中、高校生と対戦し、切磋琢磨する。