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2016年8月1日

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内村選手の修正能力の高さ

 絶対的エースの個人総合の連覇も見どころの一つ。彼が国内無敵、世界でも一流であり続けるのは、修正能力の高さがあるからだ。内村選手も幼稚園時代にトランポリンを中心に遊び、だれに教わるともなく、年上の子や大人の動きをまねしてひたすら遊んでいた。「空中で回転、ひねりをしていてもしっかり着地点を見ることができる」と内村選手が語るように、野性的、本能的な空間認識能力、水平感覚、スポーツビジョン能力はこうした遊びの中から育っていた。着地点が見えることで、回転の速さや軸のブレを感じ、腕、足などを微妙に動かし、速さやぶれを調整できる。この修正能力の高さが内村選手のきれいな足そろえ、見事な着地につながっている。

カッシーナ(伸身コバチ1回ひねり)

 床も楽しみだが、やはり空中で舞う回転技が何本でるか、内村選手の得意の鉄棒も見逃せない。前回ロンドン五輪よりどこまで進化したのか。D難度の「コバチ」(後方抱え込み2回宙返り)に、伸身姿勢とひねりを加えたG難度の「カッシーナ」(伸身コバチ1回ひねり)を、どう織り込むか。コバチ、カッシーナも腕を離し、空中の最高点に達する高さはほぼ同じ。回転の速さを変えることで、コバチ、カッシーナを調整していると言われる。完成度に円熟味をどこまで加えられるか、そして「ウチムラ」の名前を刻むような独自な技を見せられるのか、目が離せない。

失敗の練習で培う伝統

 内村選手は北京、ロンドン五輪で金メダル1、銀メダル4を獲得した。主将でもある絶対エースは「日本は優勝を狙える世界一のチーム」と語る。自信の裏には、「失敗の練習を繰り返し、どんな境遇の中でも力を出せるという自信があるからだ」と小田教授は指摘する。

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 こうした失敗の練習は、とにかく小さい時から遊びとして体操に親しみ、その後、一生懸命練習する日本人の気質にかかわっているのかもしれない。1960年のローマ大会から1976年の体操男子団体5連覇のうち3大会で中心選手として活躍し、8個の金メダルを含む12個のメダルを獲得した加藤沢男さん(69)は作家、門田隆将氏の『あの一瞬 アスリートが奇跡を起こす「時」』の中で興味深いことを語っている。

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