2024年7月14日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年8月24日

 すべての複雑な問題について、明確で、簡単で、間違った答えがある、というMenckenの言葉は名言です。最近の典型的な例は、論説が言及しているように、トランプ米大統領候補です。

 論説は、西側世界に見られる国民の不満、怒りの主たる原因は実質所得の長期停滞である、と言っています。トランプの支持者の中心が、所得の伸びていない白人の中、低所得者層であるとの指摘は夙に行われています。

 米国経済は失業率の大幅低下等マクロ的には欧州、日本と比べて好調ですが、実質所得が上がらないことで、国民が景気回復を実感できず、景気回復に取り残されていると感じていることが不満や怒りに繋がっているのでしょう。
国民の不満、怒りの主たる原因は経済的なものですが、国民の不満や怒りは政治現象です。トランプの共和党大統領候補選出、ル・ペンの大統領選の有力候補への台頭は、その典型例です。
論説は、長期停滞に政策の失敗などが重なると、民主主義の正統性と世界秩序のバランスが崩れると言っています。これは国民の怒りに対する答えが、自国優先策になりやすいことを反映した懸念です。トランプの貿易、安保政策は典型例です。
論説は国際協力の重要性を強調していますが、国際協力の推進の前に、国内政治をただす必要があります。トランプの台頭は、共和党がオバマ政権反対を最優先させ、国民の不満に耳を傾けなかったことが大きな要因でした。
その点から言うと、論説の5つの対策は、議論を広げ過ぎている感があります。気候変動は確かに重要ではありますが、国民の不満に耳を傾けるという点から言えば、やはりとりあえず実質所得の向上を最優先させるべきでしょう。
国民の不満、怒りに正しく対処しないと、民主主義の下支えにひびが入り、経済的、社会的混乱に対処しにくくなります。同時に、移民排斥、保護主義が広まれば、戦後の国際秩序が挑戦を受けます。論説は我々の文明そのものの運命がかかっていると言っていますが、あながち誇張とは言い切れません。
 


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