Finistera岬にて
7月9日、Finisteraの街にある公共巡礼宿に到着。受付は二人のガリシア美人である。ここで巡礼手帳を提示してサンチアゴから歩いてきたことを証明するとFinistera到着証書を発行してくれる。
ガリシア美人にキッチンの使用を願い出ると親切に調味料、パスタ、野菜など巡礼者が置いていった食材を用意してくれた。Finistera岬まで歩いて小一時間という便利な場所にあるので公共巡礼宿は超満員である。後からチェックインした連中はベッドがなくテラスやバルコニーの長椅子に毛布や寝袋を広げて寝ることになる。
Muxiaにて靴供養
7月11日、Finisteraから40キロ北上した海岸沿いにある聖地Muxiaに到着。ここが巡礼者の終着駅である。Muxiaの巡礼事務所の手前500メートルくらいで左足の靴の靴底全部が抜けてしまった。このウオーキングシューズは巡礼旅を開始して30日余りで左足に小さな穴が開いてから毎日の酷使により次第に両足の靴底がすり減ってきて数か所の穴が徐々に拡大。靴底に段ボールを敷いてその上に中敷きを入れて更に靴全体をひもで縛ってだましだまし歩き続きけてきたのである。
巡礼途上で巡礼者に出会う度に新しい靴を買うように勧められたが、「私にとりこの靴は一年半前にバックパッカー旅行を地中海で始めて以来の盟友であり古女房である。巡礼の途中で彼女を見捨てることはできない。巡礼の終着駅(テルミナ)まで彼女と一緒に歩く覚悟です」と説明してきた。
残り500メートルなのでビーチサンダルをザックから取り出して履き替えて、古靴をぶら下げて歩いた。巡礼事務所に到着すると、またしてもガリシア美人がいるではないか。彼女にMusia到着証明書を発行してもらい、靴を供養したいと申し出るとマリア様のような微笑を浮かべて「大事な記念の靴ですね。事務所の外にあるキリスト像の下に安置してください」と。
こうして古靴を丁重に供養して1650キロの巡礼は終わった。歩き始めてから78日目であった。
⇒第21回に続く
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。