美しい物語の裏に潜む謎
亜紀役の菅野美穂と、弓子役の松嶋菜々子の静かな競演がドラマに深みを加えている。
弓子はフラワーアレンジメントとキッズクラブを経営しているという。エントランスで、弓子が胸に抱えた花を落としたのを、拾ってやったのがきっかけで、亜紀は知り合う。
引っ越した直後で、整理整頓ができていない亜紀の部屋を住民仲間が突然、訪れようという「いじめ」に対して、弓子がてきぱきと手伝い、フラワーアレンジメントや軽食の準備までして、亜紀の面目を守る。
タワマンの各部屋の映像が、PCの画面のショットで流れる。それは、セキュリティーのために備え付けられた天井のカメラからのものである。セキュリティーの防御を破って侵入したのである。
部屋を監視しているのは誰か。弓子なのだろうか。
「女たちは見守られているのではなく、見られている」
脚本の池田奈津子のつむぎだす言葉が、ドラマの縦糸となって美しい物語の裏に潜む謎がひたひたと観る者に迫ってくる。池田は「アルジャーノンに花束を」(TBS・2015年)や「黒の女教師」(同・2012年)などの佳作の脚本も手がけている。
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