2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年10月27日

 この記事は、今のロシアの政治を的確にとらえています。9月18日の選挙では、国家院〈下院〉の450議席のうち、343議席を与党の統一ロシアが取り、与党に近い公正ロシアも23議席を得ました。野党とは必ずしも言えない自民党が39議席でした。共産党は42議席を得ました。
多くの反政府、野党勢力を抑え込み、メディアの報道を統制した中で行われた選挙であり、この結果をプーチンや与党への強い支持の表れと見るのは必ずしも正しくありません。

 投票率48%はそれなりに高く見えますが、ロシアは通常選挙の投票率が高いこと、今回の都市部での投票率3割は異例に低いことを合わせて考えますと、人々が選挙に関心を失ってきていることに注目する方が、今後のロシア政治の動きを見るうえでは重要でしょう。

 統一ロシアが議会議席の4分の3以上を占め、ヤブロコなど本当の野党がいない中で、議会での議論が活性化することはありませんし、国民の多くは議会での議論に注意を向けることもないのではないかと思われます。

国民の声が届きにくくなる

 議会の役割が小さくなるということは、国民の声が政治に反映されなくなり、プーチンには国民の声が届きにくくなります。民主主義の空洞化は、国民の不満の吸い上げがうまく行かないことにつながり、政治の脆弱性、不安定性の増加につながりかねません。

 プーチンは批判にもっと寛容になったほうが長期政権を築けるようにも思えますが、彼にはそういう姿勢をとる可能性はないと思われます。

 尚、米国各紙もこの選挙について社説を掲載し、ロシアの民主主義の後退を指摘していますが、参考までにその標題のみを、紹介します。ウォールストリート・ジャーナル紙が「プーチンのいかさま選挙:ロシアの独裁者は本当の反対派なしの民主主義を欲する」、ワシントンポスト紙が「プーチンは今回欲しいものを手に入れた。しかしそれ以外は崩壊へのレシピである。」、そしてニューヨークタイムズ紙が、「プーチンの容易な勝利の裏」となっています。

  
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