9月24日付の英エコノミスト誌は、「空虚な選挙:最低の投票率の議会選挙は、プーチンがその政治基盤との接触を失いつつあることを示唆する」との社説を掲載し、今回の選挙の意味を論じています。その概要は、次の通りです。
プーチンは欲しいものをすべて手に入れた?
表面的には、プーチンは欲するものすべてを手に入れた。9月18日の選挙で与党統一ロシアは議会の4分の3の議席を得た。5年前の選挙の時には抗議の動きがあったが、今回はそれもない。プーチンは、安定と党への信頼の現れであると述べた。
しかし全くそうではない。クレムリンは選挙を不毛なものにするため、あらゆる努力をした。真の野党やその指導者を排除し、嫌がらせをした。
公式の投票率は48%で史上最低である。この平均はチェチェンやダゲスタンの「80%以上」の投票率をも含む。モスクワやサンクトペテルブルクの投票率は、5年前は3分の2であったが、今回は3分の1であった。立候補できなかったナヴァルニーは支持者たちに、「負けたのではない。なぜなら選挙はなかったから」と述べた。
プーチン第1期後、2004年以降、議会は政権の決定を承認するだけの機関になってしまった。しかし石油価格が高く、経済が成長している時には、議会も与党もそれなりの立場を持っていた。議会を通じてクレムリンの石油収入へのアクセスもあった。しかし石油価格は低下、経済は不況、生活水準低下の中、今はそうではない。都市の中産階級は代表されなくなっている。統一ロシアは政府の権力実施の道具でしかない。
野党を抑え込み、議会の意味をなくさせ、クレムリンはロシア政治を海図のない危険な領域に押し出している。プーチンの勝利は議会を見せかけにし、結果として彼は現実から切り離されることになっている。計器が見えない中で航空機を運転する状況になっている。
プーチン支持層にも緊張がある。2014年以来、労働争議は22%も増えている。ほぼ毎日の抗議は政治的ではなく、生活問題に根差す。そしてこういう抗議の多い地域での投票率は、例えばイルクーツクでは28%であった。上層部では最近、セルゲイ・イワノフが辞任した。今後、醜い闘争がありうる。
KGBの継承者、連邦治安当局の力が増大してきている。対外諜報や要人警備局も統合したKGBの再創造も言われている。
プーチンは、自らを唯一の政策決定者、秘密警察を安定のための最も効果的な道具と見ている。ソ連の指導者も同じ考えであった。
出 典:Economist ‘The hollow election’ (September 24, 2016)
http://www.economist.com/news/europe/21707554-lowest-ever-turnout-duma-elections-suggests-vladimir-putin-losing-touch-his