効果あるの? 誰のためのマナーCM
公開からしばらくして、じわじわと炎上し始めたのが東急電鉄の車内マナーCM。「都会の女はみんなきれいだ。でもときどき、みっともないんだ」とナレーションが入り、社内で化粧をする女性を見た若い女性が「みっともな」とつぶやく。その後、若い女性が立ち上がって、「気付いてよあなたはマナーができてない」と踊り出す。
このCMについては、電車内化粧よりも前に注意するべきマナーがあるのではないかという批判が多い。たとえば、ヌードが掲載されたスポーツ新聞を他の人から見えるように広げる行為や、席を占領する大股開き、卑猥な内容の車内広告、酔いつぶれて寝てしまう人など。
確かに、電車内の化粧をする行為を目にするのは筆者も好きではない。まるで、その人の私的空間に入ってしまったかのような居心地の悪さを感じてしまうからだ。しかし、多くの人が指摘している通り、大股開きや酔っぱらった末の嘔吐……などのように、具体的に他人の迷惑になる行為は他に多々ある。電車内では痴漢や駅員への暴行などの犯罪行為も多い。ここまで凝ったCMをつくるのであれば、他に優先するべきマナーや違法行為があったのではないかという疑問には同意する。
また、このシリーズには「歩きスマホ」を注意するバージョンもある。こちらは若い男性が登場し、歩きスマホをしているせいで主人公の女性とぶつかる。次回作があるのであればぜひ、中年男性が駅員に対して激高している様子や、泥酔した中高年が車内で酔いつぶれる様子も描写し、注意喚起してほしい。マナー違反をするのは、女性や若者に限った話ではないのだから。
ちなみに、個人的にこういったマナーCMは、どれほど効果があるのかに疑問がある。歩きスマホにしろ車内化粧にしろその他の迷惑行為にしろ、やる側はこんなマナーCMなど気にならない図太いタイプだと思うからだ。迷惑行為にイラつきを感じている側に「迷惑行為だから注意してもいい」というお墨付きを与えるためのCMなのだろうか。まるで、客同士の諍いを煽るようなCMにも見えるのである。
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