2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年11月22日

 イランの核合意は、すべてがうまくいっているわけではありません。一番の問題は、核合意が、イラン側が期待していたようなイラン経済活性化の効果を上げておらず、イランが失望していることでしょう。主な原因は、西側のイランに対する投資が進んでいないことです。米国の対イラン制裁は核開発だけではなく、人権、テロ組織支援、ミサイル開発に関しても課せられており、これらは核合意以後も継続されています。特にイランで広範なビジネスに関与している革命防衛隊が制裁の対象に指定されており、西側の銀行・企業は、革命防衛隊の関与を懸念して、対イラン投資を躊躇しています。

イラン投資の促進

 論説が言うように、米・イラン政府間の協力関係を制度化することも重要ですが、いかにしてイラン経済を活性化し、イランの失望を解消するかという点から言えば、西側の銀行・企業の対イラン投資を促進することが必要です。米国が核開発以外の制裁を解除することは望むべくもありませんが、せめて財務省が制裁の基準をより明確にし、西側の銀行・企業が安心してイランに投資できるようにすることが肝要です。

 イランの核合意は、イランが核兵器製造に繋がりうる濃縮能力を10年にわたって大幅に制限することに合意したこと、そして米国がイランとの関係改善に踏み切ったことで、歴史的な合意ですが、両国内に合意に対する反対が根強く存在します。この合意を維持するために、あらゆる努力が惜しまれるべきではありません。

  
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