「その先」にあるものを、見続けたい
また、石野さんの幼少時のエピソードにもとても感動しました。
それは、幼稚園生のころ、紙をハサミで切り刻んでいて、これを最後まで続けると一体どうなるんだろうと思ったそうです。ところがハサミで切れる限界までいくと、もうそれ以上切ることができなくなってしまいます。その時、たった4歳か5歳だった石野さんは思ったそうです。本当はもっと細かくすることができるはずなのに、どうしてこれ以上できないのだろう? この先はどうなるのだろう? と。
まさにその時の疑問“この先にまだあるはずの見えないもの”を見たいと思い続けて物理学者になられたというお話には心から“すごい!”と圧倒されました。
そんな石野さんからうかがった数々の印象的な言葉の中でも私が最も感銘を受けたのが「“BEYOND” must be beautiful.」です。石野さんが素粒子物理学の研究を続ける上での信念とも言えるもので、正確には「Beyond the standard model must be beautiful.」 日本語にすると「その先は美しいに違いない」でしょうか。未知の世界、まだ見ぬ真実を追い求めながら、日々深く重く、大きな意味を持つ実験と、そこから導き出されるデータに対峠しているそのモチベーションが「“BEYOND” must be beautiful.」「その先は美しいに違いない」と信じて、目の前の困難を乗り越えていく姿勢は、素粒子物理学という最先端の世界だけではなく、自分の日常にもあてはめることができる素敵なビジョンだと思います。
今、読者のみなさまにとって、「その先」とはどのようなことでしょうか。 みなさまにとっての“Beyond the standard model”とは、いったいどのようなことを意味するのでしょうか?
最後に、これまで12回のコラムに、おつきあい下さいまして本当にありがとうございました。
何か少しでも興味を感じていただけるお話しをご紹介させていただくことができていましたら嬉しく思います。またどこかでお目にかかることがありましたら、どうぞよろしくお願いします。
そのときまで「“BEYOND” must be beautiful.」を信じて……。