入植者は現在約60万人にも上り、オバマ政権下で10万人も増えた。仮に和平交渉が進んだ時、入植者が占領地に居座れば、国境の画定は非常に困難になる。このためオバマ大統領は入植が交渉の大きな障害になるとして批判してきたが、ネタニヤフ首相は聞く耳をもたず、決議が採択された後もイスラム教徒の聖地である東エルサレムへの600戸の新たな住宅を建設する計画を推進する姿勢を示していた。
ネタニヤフ政権は決議について「オバマ政権が作成するのを手助けし、採択を懸命に働き掛けた決定的な証拠がある」と非難、「われわれはたたかれてばかりはいない」と反発した。米国はこの画策説を否定しているが、ケリー国務長官と決議の提案国の1つであるニュージーランドの外相が採択前に会談したことにイスラエルは大きな疑念を抱いている。しかしイスラエル有力紙ハーレツによると、実際に決議をまとめるために暗躍したのは英国だという。
エルサレムに大使館移せば戦闘勃発も
オバマ政権が拒否権を発動せずに決議を容認したことに、トランプ次期米大統領は批判的。新政権が始動する「1月20日以降は異なる」と述べる一方、「国連は人々が集まり、楽しい時間を過ごすためのクラブになりさがっている。嘆かわしい」と国連への強い不満もツイートした。
トランプ政権がオバマ政権よりもはるかにイスラエル寄りになるのは目に見えている。中でも米大使館をテルアビブからエルサレムに移すと主張してきたトランプ氏がこの移設に踏み切れば、パレスチナ側の猛反発は必至で、新たなインティファーダ(反イスラエル抵抗運動)やガザのイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘再燃の懸念が現実のものとなるだろう。
ハマスとの戦闘が再燃すれば、ガザからのロケット弾攻撃が多発し、これにイスラエル軍が猛爆撃で対抗し、戦闘がエスカレート、09年や12年のようにイスラエル軍がガザに地上侵攻する懸念も高まる。