2024年4月19日(金)

中東を読み解く

2016年12月30日

「無視のオバマ、歓迎のトランプ」

 この“3国同盟”はまた、力がなくなった者、利用価値がなくなった者を容赦なく切り捨てるという非情な国際政治の一面を垣間見せるものでもある。これまでシリア和平の実現に取り組んできたオバマ政権を停戦交渉から完全に排除したのだ。オバマ政権が1月20日に最後を迎え、今やレームダック政権に成り下がっていることを見切ったものだ。

 ロシアによると、シリア和平会議が来年1月末までにカザフスタンの首都アスタナで開催される予定で、サウジアラビア、エジプト、イラクなどが招請される見通し。しかしオバマ政権については完全に無視、ロシアは「トランプ政権発足後の米国の参加」に期待、歓迎を表明した。

 無視されたオバマ大統領だが、これまでのたまっていた鬱憤を晴らすかのように外交的な強行策を相次いで打ち出している。特にロシアについては、プーチン政権が先月の米大統領選挙に干渉するためサイバー攻撃を仕掛けたとして12月29日、米駐在のロシア外交官の大量追放、ロシア政府や民間企業幹部の在米資産凍結などの制裁措置に踏み切った。ロシアもこれに報復し、両国関係は冷戦以降、最低レベルにまで落ち込んでいる。

 オバマ大統領は中東和平を阻害する入植地建設を進めてきたイスラエルに対しても、国連安保理でのイスラエル非難決議を通過させるなど異例の措置に踏み切り、ケリー国務長官がネタニヤフ政権を名指しで非難した。

 米国を排除したシリア和平協議の行方がどうなるのかまだ予断を許さない。米ロ協調路線を示唆しているトランプ氏が、「米国第1主義」を主張しているからといって、中東における米国の影響力の低下を何もせずに放置するとも考えられない。トランプ政権の“重し”と見られるマティス国防長官の対ロ不信は相当強いともいわれ、トランプ政権がシリア和平協議にロシアの思惑通りに参加するかは依然不透明だ。

  
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