2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2017年1月11日

真夜中のイラン攻撃を進言した新国防長官

 ペルシャ湾での米、イランの緊張が高まる中、新しい国防長官に指名された海兵隊の“荒くれ者”ジェームズ・マティス大将が中央軍司令官当時、イラン本土への攻撃をオバマ大統領に進言していたことが明らかになった。

 米ワシントン・ポスト紙によると、マティス将軍が中東地域を統括する中央軍司令官だった2011年、イラク駐留米軍はイラン支援のシーア派民兵のロケット弾攻撃を受け、米兵の死者が急増していた。このためマティス将軍はロケット弾の供給元であるイランを直接叩く、という提案をパネッタ国防長官と大統領に行った。

 具体的な提案の内容としては、真夜中にイラン本土にある発電所か、精油所を攻撃するというものだった。提案に対し、オバマ大統領はイラン本土への攻撃は地域の不安定な状況をさらに悪化させ、紛争を拡大させると一蹴したが、将軍はそれ以降もイランへの脅威を訴え続けた。

 オバマ大統領が中央軍司令官に起用したマティス将軍と面談し、優先課題を尋ねた際、将軍は「3つある。第1にイラン、2つ目もイラン、そして3つ目もイランだ」と答えたという。

 将軍はイランが戦争を始める時は高速艇に機雷を積み、ホルムズ海峡にばらまくのが最初の動きになるとし、イラン側が高速艇に機雷を積んだ段階で速やかに破壊する権限を求め続けたが、大統領に拒否され、最終的には任期を全うせずに退官させられた。

 筋金入りのイラン脅威論者が10日後には議会の承認を経て新しい国防長官に就く意味はイランにとっても大きいものがある。トランプ次期大統領は9日、ユダヤ人で娘婿のジャレッド・クシュナー氏をホワイトハウスの上級顧問に任命した。

 イランとイスラエルは不倶戴天の敵。イスラエルの同盟国である米国の新政権の中枢に座るマティス将軍とクシュナー氏の言動が日本のエネルギー資源の生命線であるホルムズ海峡の緊張に影響を与えるのは確実である。

  
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